ヘボゲーマーかくれねこの活動メモ

だいだいXM(エチゾチック・マター)もとい某位置ゲーのせいで興味無かった筈のスマホ・タブレット向けゲームアプリのほんの一部に心を囚われてしまった毒吐き閑人。更新は不定期且つ気力の有るときのみなので悪しからず。

数年Ingressエージェント末席やってるのにIngressのリアルイベントに未だ慣れようにも慣れることが出来ない(嘆息)

※当記事はIngress & Wayfarer(その2)Advent Calendar 2023の12月16日分の記事です。

結局このブログも先日のNintendoLive2024開催中止などゲーム案件のネタなら世の中にわんさか溢れているし、そういうのをネタにせずとも当初のように自分が日頃現実逃避としてプレイしている数々のAndroid向けゲームアプリのプレイ記事でも書けば良いのだろうに全く更新しないものになってしまった。
それどころか今年は9月に神戸でIngressリアルイベントのひとつであるCtrlXMアノマリーが開催されて当日に現地参戦したのだが、ただでさえもう旧TwitterことXでダラダラ書き散らかすだけで良いやと思う事が多くなった挙げ句、母がここ数年の体調不良の果ての逝去に伴う母の最後の居宅の後片付けに追われたこともあって、はてブロの方の記事を書く気力が全く消え失せアノマリー参戦録すら書く気にならなくなってしまった。
とは言え実はNintendoLive2022におけるどう森DJK.Kライブが開催された意味についての御託を前回の記事の後に書こうかともずっと思っていたりした訳で、今からそれを書き始めたところで一体いつ書き上がるのやら(苦笑)
その神戸CtrlXMアノマリー当日であるが、個人的には元町の中華街を彷徨き何か食べ歩きながらアノマリーメダル入手条件満たせば良いかなと思うも、やっぱりアノマリー参加実績がスキャナーに残らない結果になるのは嫌だと考え、結局当日の陣営受付で結成されたチームに入って壮絶な陣取りバトルに身を投じる事に。
が、サーバーに負荷がかかり過ぎたからなのかなぜか作戦中に六甲山地の中に位置情報が飛んだり、課金でインベントリを確保するもあっさりバースターが尽きるわで、陣営戦に寄与出来ていたかというと相当微妙な状況で終わったのであった。
そりゃそうかw何故ならもう現実逃避としても日頃からスキャナーを開く事が『ポケモンGO』を起動させる事以上に無くなり、それよりはもっぱら『ピクミンブルーム』を何だかんだ腐しつつも続け、『モンスターハンターNow』配信開始後はモンハンの世界から来た猫っぽい獣人と一緒にこっちの世界にやって来た「モンスター」こと爬虫類系クリーチャーを討伐すべく「一狩り行くか……」となっていた事が多かったしと、スキャナーを開いてポータル調査やポータルに対する操作を滅多にやらなくなっていた訳で。(そんな有り様でしたがアノマリー当日に御一緒されたIngressエージェントの皆様、本当に有難うございました。)

アノマリー開始前の神戸市内某所でのスキャナーの様子。アノマリー参加の為に来ている他のIngressエージェントの方々がIngressポータルに様々なビーコンを立てておられたが、今回目立ったのはアノマリーの前々日に配布された『モンスターハンターNow』配信開始記念ビーコンだった。それだけでもモンハンNowに対するカプコンとNianticの力の入れようの半端なさが伺えた訳だが、まあアノマリー参戦勢にとってはインベントリを圧迫するだけの代物でしかなかった様でwなお今回のアノマリー終了時にアフターパーティーの会場にてモンハンNowのゲーム内アイテムが入手出来るプロモーションコードが記載されたカードが配布されたりもした。因みに大阪のカプコン本社であるが、実は『ポケモンGO』の配信開始前から存在するIngressポータルのひとつだったりする。

アノマリー参加者受付ブースが設置され、後でアフターパーティーの会場となった神戸ポートアイランド市民広場の中央広場にはシェイパーグリフが描かれた幕が掲げられていた。

因みにアノマリー当日、ポートアイランド中央広場に近い神戸国際会議場と神戸国際展示場では日本心理学会の大会が開催されていた。ゲームに対しては現在やたら親和的な方向を見せている傾向のある心理学方面だが、果たしてこの日ここに来られた心理学方面の方々にとって神戸における今回のIngressリアルイベントはどう映ったのであろうか?

自分は今回のアノマリーでは神戸三宮の歓楽街にある「Sake wall」に出現したシャードゴール争奪戦に参加していた。

神戸でのアノマリー自体は自分が所属するエンライテンド側の勝利に終わったが、ここでは敵陣営であるレジスタンス側の勝利。「おのレジ(おのれレジスタンス)」という言葉すら出ない敵ながら天晴れぶりを見せ付けられて試合終了。


肝心のアノマリー参加実績を示すCtrlメダルはシャードゴール争奪戦の最中に難なくゲット。

そしてアノマリーのアフターパーティー後にネタ目的でポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』のAR機能を使った写真を撮っているうちに、アノマリーの最終フェーズ終了後からアノマリー会場を覆い尽くしていたマキナポータルに関する実績を積めず仕舞いになるという顛末となった訳である。

こちらがアノマリー終了後の神戸市内某所でのスキャナーの様子。リアルイベントではお馴染みIngress界隈で「ドロップアート」と呼ばれるゲーム内アイテムを使った表現による「KOBE」の文字もあった。それにしても皆マキナポータル潰すの早過ぎやろ!w
なお翌日のミッションデイ神戸については参加を諦め、また近いうちに最近知った海砺餅(ハイリービン)という揚げ物料理や最近気になっている中国茶器の蓋椀を求めに元町の中華街に行った際にでもミッションをクリアしようかと思うも未だに神戸を再訪出来ていない有り様だったりする。


そして帰宅の途につく前にどこで夕食をとるか悩んだ挙げ句、目に止まったのが三宮の歓楽街にある鴻錦楼なる中華料理店。結局ここで食事をして帰ったが、味は良くてもヘビースモーカー以外には店内飲食はお勧め出来ない店だった。

ここでふと疑問が湧く。そんな感じで慌ただしく神戸でのCtrlXMアノマリーを終えた自分は、Ingressのリアルイベントを通して神戸という街の魅力を上っ面のそれだけでも感じる事が出来たのだろうか?

自分は前世紀の終わりに高校を卒業して間もなく大阪に来た後、地下鉄という乗り物を通じて大阪市交通局(現:大阪メトロ)に興味を抱いたところから関西私鉄にも興味を持ち、そのうち企業イメージの一大支柱たる宝塚歌劇団のかつてから漏れ伝わってはいた駄目過ぎる実態が漸く明るみになり長年流布して来た虚像が一気に消え失せる形で現在大いに批判されている阪急電鉄や2000年代の一時期調子に乗るも再び本来の最下位争いでシーズンを終えるようなプロ野球チームというポジションに戻るも今年は何故か「アレ」という言葉と共にプロ野球日本シリーズを久しぶりに制したぶっちゃけファンの程度も低い印象しかない阪神タイガースのオーナーたる阪神電鉄に関するネタを、当初は阪急も阪神も実は色々スゲーなと思うもその後に経営統合した両社が統合以前から抱えてきた企業体質のヤバさ(特に阪急側の創業者カルト的な体質)に薄々気が付き、しかしそれが正されるのは最終的には自滅以外に無かろうと諦観に至ったが故に「 ま た 阪 急 阪 神 か (呆) 」とかなり腐す方向でゆるくかつ雑に追っていた時期があった奴である。
その事もあって過去に乗り鉄がてら神戸という街を自分の財布事情が許す範囲で何度か訪れた事があるのだが、勿論それはガチの観光PRに長けている鉄道業者のプロモーションの影響にガッツリ乗った上のものだったので街自体に大してカネを落とさなくても上っ面だけの街の魅力に容易く触れる事が出来た訳である。
なので実はどこにこんな名店があるという話になったところで、店の名前は見聞きしたことはあるがカネの都合もあって実際には行ったことがない場所の方が圧倒的多数という(苦笑)もっこす? 関西のエンライテンド勢が贔屓にしているというそんなラーメン店があるんか。なんかそこも内情はかなりアカンかったというニュースアノマリー終わって間もない頃に有ったけど(呆) (そこに関するニュース記事を検索すると以前から結構いろいろ人権的にも駄目な事をやっていてはそれが明るみになる度にお上からペナルティを受けて来た企業なようで、いい加減ちゃんと自浄しろとしか言いようがない。)

しかし、これまで何度かIngressのリアルイベントに参加する度に自分が思ってきたのは正直もっと現地でロクに散財出来ないなら出来ないなりの観光がしたかったという事である。
自分がそう思ってきた理由には幾つか思い当たる点がある。まず第一には自分の財布の事情により観光をするにあたって散財する事にかなり限りがある事。自分にとってIngressを含めたNianticアプリは基本的に現実逃避目的の道具でしかなく家族は位置ゲーは時間とバッテリーの無駄と一刀両断して一緒にプレイしていないが故にそれにのめり込む事で家族をあまり心配させる訳にはいかない事(自分の場合は遠出をしてスマホとモバイルブースターの両方のバッテリーが尽き連絡が取りにくい状況で帰宅が遅くなった時に配偶者が警察に捜索依頼をしかけた事があった程である)。そして自分がADHD・広汎性発達障害の診断を受けた事で漸く先天的に抱えてきたものだと諦観するに至った時間感覚による行動や判断の鈍さと心身面の不安定さ。それらを抱えている状況で観光を楽しもうとしても、自分のペースでケチな観光が出来なければ思い出も台無しになる訳である。
残念ながら、自分のような者にはIngressのリアルイベントを本気で楽しむ事自体が実はかなり難しいと言ってしまって良いのかもしれない。そもそもIngressのリアルイベントに関係無くとも本気で楽しもうとするならばカネに余裕がある健常者ですら周到な下準備が必要なのが観光というものなのだから、自分のような者にとっては尚更それが難しいのだ。
そしてこの状況を解決出来る条件は、今の自分には無い。ただそれだけの事だ。
とは言うもののIngressのリアルイベントについては今後も気力と財布の事情が許す限り参加しようかなと思っていたりする。しかし本邦における次のXMアノマリー開催は沖縄とのことでそれへの参加は流石に難しいか。

ということでエージェントの皆様、今年も良いホリデーシーズンを……と言いたいところだが、イエス・キリスト所縁の地ではイスラエルによるテロとの戦いを口実にした酷い対パレスチナ軍事作戦が米国の後ろ盾の元に行われている状況で、正直「ハッピーホリデー」を言うのすら腹立たしい。

国際社会よ、特に事の発端を作った欧米圏、そして本邦こと日本含めたその同盟国よ、いい加減パレスチナが平和と自由を手にするのを認めたらどうだ!!

スプラトゥーンシリーズ・イカ研究員のIngressしぐさ

当記事はIngress & Wayfarer Advent Calendar 2022の12月14日分の記事です。が、はてな記法(特に引用記法)が何度やっても反映されずに腹立たしくなってしまう(これははてダをやってた頃からずっとなのだが、はてな記法を使った筈が公開前のプレビューで反映され無いことが多く、どこかで書き間違えていることは確かなのだが一体何をどう書き間違えてるのか全くわからない事が多い)ので公開が遅くなってしまった。書きたい事を思い付いてもいちいちこんな面倒な事をしなきゃいけないから自分はもうTwitterでとりとめもなく連ツイしていくだけでいいやと思うようになったんだ(苛)

今年のピクミンブルーム6月度コミュニティディのリアルイベント醜態の件や2020東京五輪汚職問題に対する任天堂持ち上げの傾向に対するツッコミやNintendoLive2022の件やポケ森5周年&ピクミンブルーム1周年など、このブログの記事のネタにしたほうがよかった話題が多かったにも関わらずTwitterでぶちギレしながら何か呟くだけに留まり、結局約1年振りの更新、それも昨年のピクミンブルームAdventCalendar2021向けの記事以来の更新になる。

そんな訳で今年10月に行われたNintendoLive2022の配信アーカイブを観て、Ingressエージェント末席としてまさかと思った事について書く。もしかしたらナイアンティック川島優志氏の著書『世界を変える寄り道』にその手がかりや答えが既に有って、こんな記事を書くぐらいなら取り敢えずなぜそれを読まないのかという話になるかもしれないが、件の本は個人的には気になるも未だに読む気が起こらないまま今に至るのでそこはご了承願いたい。

今年9月に発売され任天堂自らの制作・開発作品としては歴代トップクラスの初動売上を挙げるも、ゲーム自体の質の問題に難が目立った件への話題が目についたスプラトゥーン3』であるが(なおこれより酷い同様の事態がその後任天堂最大の取り巻きにして別動隊たる株式会社ポケモン及びゲームフリークによる『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』で起きた訳だがw)、そのスプラトゥーンシリーズのプロモーションが1作目である『スプラトゥーン』から一貫して「日夜不思議なイカを研究している研究員」の研究発表という形で行っているのはご存知の方も多いと思う。

因みに自分がこのシリーズ作品の存在を知ったのも実はIngressエージェントのコミュニティ内で類似性がちょっとだけネタにされていたからで、だからといってプレイする気までは起きない。というかスプラトゥーンシリーズに限らず任天堂作品で素晴らしいと思えるのはコンセプトとビジュアルと音楽だけで、それすら同業他社の作品と比べてずば抜けて魅力があるかと問われると個人的な答えは「否」である。

disるのはこのぐらいにして本題に入ろう。このスプラトゥーンシリーズの「日夜不思議なイカを研究している研究員」こと「イカ研究員」及びその「助手」達、プロデューサーの野上恒氏を筆頭に責任者クラスのスタッフ勢が白衣着用という本邦における科学系研究者のステレオタイプに基づく格好をして演じておられる訳だが、約1名を除き任天堂による公式プロモーションの場で顔出し済みのスタッフばかりだと判りかねないにも関わらず完全な身バレを恐れてか全員サングラス着用という異様な出で立ちでの茶番が行われているのである。

最も彼らのリーダーであるイカ研究員については以下の動画のようにその正体が野上氏である件を早い時点で公式自ら明かしていたりする訳だがw

youtu.be

ところでこの動画の冒頭、「南国のリゾートでバカンス」って巨大コントロールフィールド構築の為にサイパンとかグアムとかに日帰り旅行とかそういう話かな?(違w)

因みに『スプラトゥーン』の開発が開始されたのは「社長が訊く」によると2010年代前半における任天堂の失敗事例を飾る顛末に終わったWiiUの立ち上げの後との事で、時期的にも開発のきっかけにIngressが影響していた訳ではないのは明白であろう。

とはいえ『スプラトゥーン』の開発・制作においてコンセプトや演出の仕方が最終的に固まって行った時期は、まだGoogle内部にあったナイアンティックが『Ingress』を世に出し一部の好事家の間で話題になり、後にIngressコミュニティ以外の場でもナイアンティック日本法人スタッフと馴れ合う程のコアなユーザーまでいる古参ユーザー勢を増やしていっていた頃と被っていた筈である。その偶然がどこまでスプラトゥーンシリーズのプロモーションのあり方に影響したかは、所詮外野の者でしかない自分には知る由も無い。

しかし地球温暖化に伴うホモ・サピエンスとその文明の自滅後の遥か未来に勃興した水棲生物から進化した多種多様な人類とその文明世界の様を遥か過去にあたる"現在"から科学の力を以て覗くという演出のプロモーションと、「スプラトゥーン甲子園」等のリアルイベントの場にスタッフ自ら「イカ研究員」という茶番を行う形で登場するという発想自体、Ingressエージェント末席である自分から言わせれば何というかもう「XMに大量被爆した結果やろw」感しかしないのだ。

なおドワンゴ主催のゲームイベント・闘会議2016にて開催されたスプラトゥーン甲子園に関するファミ通による野上氏へのインタビュー記事を読むと、彼がシリーズ初期のころから現実とゲームを絡める方向でいた事が伺える。

www.famitsu.com

そしてこの現実とゲームを絡めるという方向で行われてきたイベントの最たるものが、闘会議2016での「シオカライブ2016」に始まった任天堂公式イベントの場におけるスプラトゥーンシリーズに登場するキャラ達の音楽ライブなのである。そういう意味ではスプラトゥーンシリーズもやはりまたある種の拡張現実コンテンツなのだろう。

そして今年のNintendoLive2022のプログラムのひとつ「スプラトゥーン3スタートダッシュ杯」の一般チーム部門の場において、イカ研究員こと野上氏が今後どういう方向でいるのかが気になり、話のネタにアーカイブ動画で優勝者表彰後の彼による総括コメント部分をざっと観ていたのだが、その最後のほうで「え?!」と思う発言をしていたのである。

youtu.be

該当部分は動画の7時間8分5秒以降。そこでの野上氏による締めの挨拶を書き出してみた。

ですのでね、これからもまだまだ、まだまだ研究、僕らも研究を続けて行きますし、チームの、あの、プレイヤーの皆さんもこれからも一緒に僕らと一緒に研究を続けていただければと思いますんで、はい、一緒に『スプラトゥーン3』を楽しみましょう! 宜しくお願いします!

それ何てリモート・パーシティペーションやイカ研究員w

wrapup.lycaeum.net

野上P、イカ研究員を演じておられるうちにスプラシリーズのプレイヤーもXM調査を行っているIngressエージェントみたく、実は水棲生物から進化した多種多様な人類の時代の研究に関わってるのだとかいう設定にいつの間にかなってしまっているとか、そんなことになってなイカ?!!!

 

 

 

 

 

 

ARに賭けたスマホのピクミンは『Miitomo』の屍を越えていけるのか?

当記事はピクミンブルームAdventCalendar2021の12月24日分の記事です。

正直なところ、これまで仮想空間とかVRとかそこにARも加えたMRとかXRとかいう言葉で説明されているコンピューター技術の産物である人為的な幻の世界が急に「メタバース」なる言葉で説明されるようになってから、IT音痴から脱出出来ない層決定な自分としてはその手の話は正直はワクワクするというよりは興ざめ気味にニヤニヤするものでしかなくなった感がある。挙げ句の果てには『あつまれどうぶつの森』をメタバースの一例として明する日本語圏のメディア記事まで出てきた有り様で、そういう見方もあるのかと思いつつもあつ森をメタバース扱いするのは違和感しかない。
で、そのメタバースをdisりつつ「リアルワールド・メタバース」なるパワーワードを言い出したのが我らがナイアンことNianticなのだが、Google時代からやきもきさせられてきたIngressエージェント(ユーザー)末席としてはちょっと呆れてしまった。まあ大口叩いてなけりゃ正直ナイアンらしくないとはいえ何かと不具合が多い各アプリはもうちょっとどうにかならんのかという感がある。が、やはりどうにも出来ないのだろうなあとも思ってみたりもする。まあ自分から言わせりゃMetaこと旧FacebookもNianticもメタバースとやらを巡っては五十歩百歩感しかしてこないし、どっちも考えていることは面白そうなのだが

そしてNianticから『ピクミンブルーム』がローンチされて2ヶ月が経とうとするが、個人的にはピクミンブルームは所詮ナイアンのアプリだしなあというこれまでの見解を変えるには到っていない。ただし今のところ『ポケモンGO』やサービス終了が決定した魔法同盟こと『ハリー・ポッター:魔法同盟』はおろか『IngressPrime』よりも面白く思っていて、ナイアンの各アプリより長時間起動しているポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』の起動時間の多くを『ピクミンブルーム』が完全に奪っていった状況である。
だがナイアンであれば魔法同盟や任天堂であれば『Miitomo』『ドクターマリオワールド』みたく3年経たぬうちにサービス終了、下手したら2年も持たないのではという感がしなくもない。まあナイアンにピクミンというIPを貸した任天堂曰くピクミンブルームはゲームじゃないとの事だが、これ本当に長続きするんかという疑問はどうしても出てくる。まあピクミン自体が今の任天堂における自社制作コンテンツ四天王のうち最も最弱でスプラトゥーンシリーズの今後次第ではそれにその座を奪われる可能性がある、いや既に奪われている可能性があるだけに(但し個人的には世代交代という意味でもそのほうが良さげな気もするのだが……)もし仮にMiitomoより短い寿命を迎えても多分納得しかしないかもしれない。
ところでピクミンブルームの原作であるピクミンシリーズとほぼ同時期に世に出た任天堂のコンテンツで、最新作で「既にオワコンな日本」発であるにも関わらず辛うじて今をときめくゲームとなった存在がどうぶつの森シリーズである。そのときめきぶりたるや今年のヒューゴー賞における年変わりネタ枠として設けられたビデオゲーム部門に何故かノミネートされて案の定受賞を逃す結果に終わったという珍事まで起きた程である。
www.thehugoawards.org
まああつ森のヒューゴー賞ノミネートについてはアイコンキャラが全員イヌ科系の種族という設定だけに要は『Hades』受賞に対する「噛ませ犬」だったという事でよいのかもしれない(苦笑)
そしてあつ森のときめきぶりはローンチ直後にどう森シリーズファンや任天堂に大してあまり悪い印象を抱いていなかった勢まで落胆させるも度重なるアップデートで評価をある程度取り戻し延命してきたポケ森に更なる延命の機会を与える事となった。そしてあつ森が辛うじて今をときめく外的な要因となったCOVID-19パンデミックの最中の2020年11月の3周年を期にポケ森に実装された新要素がある。それが「ポケ森AR」だ。


※なおポケ森3周年に合わせてポケ森ARの紹介動画もあったのだが、現在はYouTubeのNintendoMobile公式チャンネルから削除済みの模様。
なおポケ森AR実装については当時の自分はポケ森公式に対してアリだけど他に追加される要素と合わせてなんだかなという由のリプライを送っている。が、オチとしてはギフトでガチャであるフォーチュンクッキーを無料で入手出来るチャンスが増えたりと得になった事も多い。

このポケ森ARであるが、要はとび森こと『とびだせどうぶつの森』が2016年に『とびだせどうぶつの森amiibo+』にアップデートされた際に実装されたamiiboカメラのコンセプトを引き継ぐものと言って良い「ARカメラ」がメインである。amiiboカメラと異なるのはそもそもamiiboを使わないのは大前提として画面上に呼び出せるキャラはアンロック済みのキャラクター1体まで、キャラクターと一緒に家具アイテム1個が設置出来ること、そしてそれとは別に魔法同盟のポートキーと良く似た「ARコテージ」機能がある事だ。そもそもポケ森はARゲームではないのでポケモンGOや魔法同盟の様にプレイ画面をARモードにしてさもキャラクターが現実世界の風景に溶け込んでいるという感じでプレイすることは出来ず、『ポケットモンスターX』『ポケットモンスターY』の「ポケパルレ」や『ポケットモンスターサン』『ポケットモンスタームーン』の「ポケリフレ」的な方向性も有するポケモンGOのARと違い、ポケ森でのARモードでキャラとふれ合える機能は今のところ精々ARコテージでキャラクターをタップしたらセリフが見れるぐらいである。
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つまり、ポケ森ARはポケモンGOや魔法同盟のそれとは異なり「キャンプ場管理人」という設定のプレイヤー(ユーザー)が「客であるキャンパー」という設定のキャラと会話によって互いの意志疎通が取れていて、それ故に軽々しく触れるのは現実世界同様余程の信頼関係を持っていない限り失礼に当たるどころかその尊厳を棄損するものでしかない、どう森の世界観における「どうぶつ」はポケモンと異なり愛玩・使役の為のものではない、という世界観が前提のARだと言ってよい。そして魔法同盟のAR機能においてキャラクターやアイテムに触れる事が出来無いのは、対象が「ファウンダブル」という「大災厄」と呼ばれるイギリス魔法省絡みの事件によってマグルの世界に現れた魔法界に関する事物の幻影という設定だからであろう。
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ポケ森のARカメラはポケモンGOや魔法同盟のAR撮影機能と比べて自由度が高い。被写体として呼び出したキャンパー──どう森シリーズの他の作品では住民と呼ばれる事も多い「どうぶつ」と呼ばれるキャラクター──の撮影位置決めをポケモンGOに比べてもっと楽に行えるのだ。被写体の大きさを変えられるのも本来は撮影位置決めを楽に行う為のものである。ここまでは魔法同盟における「登録簿」(回収したファウンダブルの記録簿)から一部のファウンダブルを呼び出してのAR写真撮影と大差なく、撮影位置決めについては寧ろ魔法同盟のAR撮影機能のほうがスマート且つ楽だったりする。ただしポケ森のAR撮影機能はキャラクターのポーズも変えられ、更には画面切替でキャラクターと一緒に自撮りも出来るというユーザーの欲望をなるべく叶える方向の撮影機能まである。Nianticのアプリのうち一番自由度の高い魔法同盟のAR撮影機能に被写体にしたいキャラクターのポーズ変更や自撮りといったものがないのは、前述したとおりそれが「幻影」だからだという事で納得が行くであろう。
しかし現行のAR画像表示で良くある話なのかどうかは知らないが撮影中に被写体として呼び出したキャラクターが画面内で「どこかへ行ってしまう」事も多い。しかもGoogleのARCoreへの対応が必須になるため未対応の機種では無用の長物でしかない。その為ARCore未対応端末でポケ森をプレイしているユーザー救済の意味も兼ねて後に「かんたん撮影モード」というAR撮影画像風レイヤーが実装されている。

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個人的にはAR写真を撮るとしても画面上に呼び出したキャラクターを小さな妖精や手のり文鳥みたいな扱いにするのは自宅内での撮影などそうした方が無難な場合を除きどうにも違和感がある。ただそういうのはどう森シリーズ現プロデューサーである野上恒氏がパニエルに扮し怪演ぶりを見せた色々悪ノリ感満載のいつぞやのとび森ダイレクトの頃から公式がやっている事なので仕方ないw
youtu.beこれの7分26秒辺り。頭部以外はほぼ全身タイツな着ぐるみのとたけけがamiiboで呼び出したジュンを掌に乗せている様にして撮ったamiiboカメラの画像がある。下の画像がそれ。
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因みにこの後に続くシーンはあつ森の最終大型アップデートにおけるカットリーヌ実装の伏線だったりする。

ではピクミンブルームのARはどうかというと、当然の事ながらAR写真撮影においてはポケモンGOのそれと似たようなものなのでポケ森AR程の自由度はない。ピクミンブルームのARモードはピクミンを触ると鳴き声を出すところはポケモンGOと同じでそこから更に摘まんで持ち上げる事や少し離れたところに投げると言ったことが出来るのであるが、ユーザーが思うようなAR写真を撮るにはポケモンGOのそれ同様に、いやそれ以上に相当のコツと慣れが必要なのである。何せポケモンGOでは野生のポケモンは捕獲者に過ぎないプレイヤーの様相をじっと伺い、プレイヤーの手持ちのポケモンは現在の飼い主であるプレイヤーを何とか信頼している模様であるというシチュエーション故に常にプレイヤー側を気にして対峙しているのだが、ピクミンブルームのピクミンはそうではなくリーダーと見なしついて行っている存在である筈のユーザーの前ですら各個体がこちらを気にしつつも思い思いに動き回り、時には「画面の外」にすら行く個体までいるのである。ホイッスルの音である程度統率出来るとは言え、なんと言うか飼い猫と一緒にいるような感じだ。
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そういう意味では、ピクミンブルームについては蓋を開けたらピクミンが死なない世界とは言え肩透かしを喰らったピクミンシリーズファンも多いのでは無かろうか。何しろピクミンシリーズはピクミンが棲む惑星に不時着した平均身長3cmな宇宙間航行技術を持つ他惑星の人類がピクミンの習性を良いことにそれを使役しながら幾多の危険を乗り越えていく冒険譚にして異郷訪問譚である。原典であるピクミンシリーズ各作品におけるピクミン達は、そこそこの知能を有するが故に一時的とは言え群れのリーダーと見なした者に対してまるで飼い主には絶対服従する調教済みの犬のように振る舞っているどころかもはや軍隊そのものだ。シリーズ初代作『ピクミン』のCMソングだったストロベリー・フラワー『愛のうた』が悲壮感漂う曲なのはそんな世界観設定であるが故である。
youtu.be
その初代ピクミン制作・開発時に、宮本茂以下制作スタッフがゲームプレイをしていない時にもピクミンが目の前にいるような感覚になるような作品にしないといけないという認識でいた事は前のネタ記事の中で触れたが、再度引用しておく。
www.1101.com

宮本 ぼく、このゲームをどんなふうに遊んで欲しいですかと言われたときに、よく言っていたのが、花札を一生懸命やってると、お風呂に入っていても、短冊が湯船に浮かんでるような気になりますよね、っていうこと(笑)。熱中したりすると、ね
糸井 (笑)
宮本 そういうふうにして、ピクミンが見えなあかん、と思ったんですよ。お風呂に入ったらピクミンが浮かんでるし、庭歩いてたら足下にピクミンがいる。    わかりやすく言えば「このゲームをやったあと、歩いていたら足下にピクミンがいて、踏みそうになる」ふうになるものをつくろう、と。    ……スタッフには、そういう精神論が多かったかな(笑)
宮本茂と糸井重里「ピクミンをめぐる対談」その6 足元にピクミンがいる。

ただこれはあくまでAR云々以前の、作品世界への没入感を如何にしてプレイヤーに与えるかという話に過ぎなかったであろうが、このほぼ日刊イトイ新聞による宮本茂と糸井重里の対談から20年近い時が経ち、今をときめく存在となったどう森シリーズと異なり自社制作フラッグシップコンテンツのうち最も最弱な状態が今なお続くピクミンシリーズの可能性と未来を任天堂はNianticのAR技術に賭けたと言っていいだろう。勿論、現時点でNianticが試みようとしているARの有り方にスーパーマリオシリーズ以下ピクミン以外の任天堂の自社制作コンテンツが合わなかったという事情もある。それについては英語圏のゲームメディアEurogamerの記事において触れられている。
www.eurogamer.net
だからこそピクミンブルームの発表アナウンス動画における宮本茂のメッセージは「ピクミンの原作者でスーパーマリオの父でもある宮本茂です。」という自己紹介から始まるのだ。
f:id:nekotetumamori:20211224161600j:plain※画像は英語版のピクミンブルーム発表アナウンス動画より
そしてその発表動画の中で公表されCMに使われているピクミンブルームのトレーラーのBGMが歴代ピクミンシリーズ本編に関わってきたピクミンのCVの人である若井淑氏か『ピクミン2』でサウンドディレクターを務めオリマーのCVの人でもある「とたけけ」こと戸高一生氏が作りそうな明るい雰囲気の曲なのは、ピクミンが死ぬ必要のない世界に悲壮感は不要だし、ARにピクミンというコンテンツの未来を賭ける事に不安を与えても仕方がないからであろう。だいたいナイアンが開発したという事以上の不安ははっきり言って要らぬ。なおピクミンブルームのサウンドを担当したのはカプコンのモンスターハンターシリーズのサウンドで有名になり『Hey!ピクミン』でサウンドを担当した甲田雅人氏であるが、トレーラーのBGMの作曲を誰が担当したかについてはまだ明かされていない。
youtu.be
いずれにせよ、宮本茂以下任天堂のピクミンシリーズスタッフ陣はこのトレーラーで表現された「足元にピクミンがいる」という世界観をいずれ何らかの形で世に出したかったのだろう。Nianticという「黒船」がARという概念を引っ提げてポケモンに絡んで来た事は彼らにとっての幸運だったのだ。
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そしてピクミンブルームにはもうひとつ、任天堂独自のアバター「Mii」を使った今は亡き『Miitomo』の次に出たMiiにも焦点が置かれたiOS・Android端末向けアプリという面がある。穿った見方をするならピクミンというコンテンツを利用した歩行に特化した目標設定のない『Wii Fit』とも言える。そんなピクミンブルームだが、任天堂からの配信ではないとは言え任天堂の自社制作コンテンツのアプリとして果たしてMiitomoの配信期間を越えることが出来るであろうか。せめて短命に終わるとしても『ドクターマリオワールド』のそれは越えていって貰いたい感は無いわけではない。
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……とまあ、またとりとめもなくだらだら書いてみたのだが、Ingressエージェント末席にしてポケ森世界のとあるキャンプ場管理人の些細な祈りを込めた駄文はこのぐらいにしておこう。

XMとピクブルと邪推

当記事はIngress & Wayfarer(その1) Advent Calendar 2021の12月11日分の記事です。
※当記事は完全に妄想だらけのネタ記事です。くれぐれも真に受ける事の無いように!!

今年(2021年)3月にNianticと任天堂双方から開発中のアナウンスがあり一部地域でオープンβテストが行われていたNianticのピクミンアプリがその後どうなったかというと、今年10月27日にな唐突にピクミンブルーム』というタイトル名の発表そして正式サービス開始の報と共に日本国外の一部地域で配信開始され、11月1日に本邦でも配信開始となったのは周知の通りだろう
個人的にはIT技術としてのメタバースをdisり「リアルワールド・メタバース」なるパワーワードを掲げるNianticのやろうとしている事には相変わらずどうも不安しかないどころか「ダメなんじゃなかろうか」という感じしかして来ないのであるが、それでもNianticの裏側にいる諜報機関NIAのIngressエージェント末席でもある自分は『ピクミンブルーム』略してピクブルの発表動画を見て、もしやこれは「陣営戦のないIngress」なのではと思いナイアンの事だけに作動不良が頻発するのも覚悟の上でそれを自分の端末にインストールした。
そして思った通りアプリの内訳は『IngressPrime』や『ポケモンGO』やピクブル配信開始後にサービス終了の報があった『ハリー・ポッター:魔法同盟』といったNianticのアプリと同時に動作する事が出来るのだがバグも多いナイアンアプリの事だけに画面が落ちたりと固まったり端末が異常発熱したりといった作動不良が頻繁に起こる「陣営戦のないIngress」であった。IngressエージェントやポケGOトレーナーによるいがみ合いやトラブルの話を他人事として聞くのももうこりごりだからなあ
……

「マリオのお父さん」は実はセンシティブ(XM的な意味で)なのだろうか

ところでピクブルの発表動画を見て、まさかというより彼が登場してもおかしく無いわなあと思った部分がある。そう、任天堂のスーパーレジェンド級クリエイターにしてアニメ版ポケモンにおけるグリーンことシゲルの元ネタでもある人物、ミヤホンこと宮本茂が直々にメッセージを伝えている部分である。「あれ?? もしかしてこれ、ピクミンシリーズにも関与したレジェンド級スタッフが関わるも商業的に芳しくなかった『Wii Music』の時同様に所謂死亡フラグを立ててしまったというオチにそのうちなるのかな?w」と思ってしまったのはさておき、ピクブル発表動画における宮本茂の話す内容はTwitterであれば即刻「お前は何を言っているのだ」というミーム画像がリプ欄で貼られる感が……いや、実はミヤホンってXM(エチゾティック・マター)の感受性が強いセンシティブ(能力者)だったんじゃないのかと言いたくなった
youtu.be
何しろ上の動画の中で宮本茂はこう言っていたのだ。

さてみなさん、地球上には人の目には見えないピクミンという不思議な生き物がいます。
あなたのそばにもいるんですよ。
そしてこの『ピクミンブルーム』では、スマートフォンを通してみなさんもピクミンを見ることが出来るようになります。

おいちょっと待て、自分達はもしかして日頃からピクミン踏み潰して生きとるんかい?!!!wと言うかピクミンシリーズの舞台である惑星PNF-404とはやっぱりこの地球か?? と思ったが、まあ地球上といったところでピクミンが生息しているのはどうせアプリ上で何とか状況を把握できる1218世界と接している平行世界の話だろうし無問題と言えば無問題か。というかこのアプリ、ピクミン達のいる平行世界に干渉することが出来るスキャナーではないのか……?! と思ってしまった。
しかし、かつてほぼ日刊イトイ新聞が任天堂の広報的な事をやっていた特集ページ「樹の上の秘密基地」にて2002年に掲載されたピクミンについての糸井重里と宮本茂の対談を読むと、どうやらピクミンは足元にいるかもという認識に宮本茂だけでなく『ピクミン』制作スタッフも至っていた模様なのである。

宮本 ぼく、このゲームをどんなふうに遊んで欲しいですかと言われたときに、よく言っていたのが、花札を一生懸命やってると、お風呂に入っていても、短冊が湯船に浮かんでるような気になりますよね、っていうこと(笑)。熱中したりすると、ね
糸井 (笑)
宮本 そういうふうにして、ピクミンが見えなあかん、と思ったんですよ。お風呂に入ったらピクミンが浮かんでるし、庭歩いてたら足下にピクミンがいる。    わかりやすく言えば「このゲームをやったあと、歩いていたら足下にピクミンがいて、踏みそうになる」ふうになるものをつくろう、と。    ……スタッフには、そういう精神論が多かったかな(笑)
宮本茂と糸井重里「ピクミンをめぐる対談」その6 足元にピクミンがいる。

これはNianticがIngressで掲げた、「あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない」("The world around you is not what it seems.")に通じる見方だろう。恐らく宮本茂をはじめとした任天堂のクリエイター達の多くはやはり元々XMの感受性が強いかどうかしていてNIAであればエキソジェナスと見なすような自ら意思を有する存在を薄々と把握するところまで行ってしまったのではないかと邪推してしまう。そのひとつがピクミンというゲームコンテンツの主題として語られてきた、「虫のような植物のような不思議な生き物」だったのではないか。任天堂はその生物を主題にした物語を創るにあたって「PNF-404」なる地球を思わせる舞台を用意し、その内容をピクミンより一回り大きい他の惑星の人類を主人公にした異郷訪問譚にしたのだろう。つまりピクブルで把握出来るピクミンこそが本来のピクミンであり、一寸法師な宇宙船乗りオリマーの物語はやはりフィクションに過ぎないのかもしれない。
Ingressエージェント末席としてはNianticがポケモン以外の任天堂系コンテンツを利用するのにピクミンを持ってきた事はちょっと意外だったが、但しピクミンは任天堂のコンテンツ四天王のうち最も最弱なのでまず生贄になるのがやっぱりそれだったのかな感は今でもある。しかし自分はピクミンというコンテンツが宮本茂にとって現時点での実質最後の作品であるという認識を持つまで「MOTHERシリーズやF-ZEROシリーズやスターフォックスシリーズやメトロイドシリーズ同様スマブラシリーズでその存在を延命したゲーム」という認識しかなく、それ故に後に『ピクミンブルーム』という名前が与えられる事になるアプリが開発中であるというNianticと任天堂からのアナウンスの少し前にUSJのスーパーニンテンドーワールドで物理的に再現されたマリオの世界の造形にピクミンが混じっていたという件を知った時に少し驚くも正直違和感は無いなと思ったのである。何しろピクブル以前のピクミンシリーズの主人公は『ピクミン3』及びその移植+a作品である『ピクミン3デラックス』を除き名前からしてマリオと真逆のキャラとして描かれてきたオリマーなのだから。
因みにピクミン以外の任天堂コンテンツに目を向けると、『とびだせどうぶつの森amiibo+』やポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』において独自のAR撮影機能を実現したどうぶつの森シリーズがあり、そのアイコンキャラのひとつであるとたけけはその影響がテクトゥルフを彷彿とさせる存在であり、その現実世界での影響については前の記事で書いた。最も自分はとたけけについては他ならぬテクトゥルフだろうと見ているが。
kakureneko-memos.hatenablog.com
それにも関わらずNianticによる新たなARの実験場として開発したアプリの題材に選ばれたのはどうぶつの森ではなくピクミンであった。

twitter.com
www.eurogamer.net

"We did experiments with a lot of other Nintendo IPs, but famous IPs don't always mean the best fit for what our goals are, and the experience we wanted to deliver," Katayama continued. "Out of all the prototypes and demos we made, we saw Pikmin fit and balance those goals and the vision we had."
Nintendo and Niantic's Pikmin Bloom is a mix of gardening, scavenging, scrapbooking and Pokémon(Eurogamer記事)

なぜそうなったのかは、ピクミン以外の任天堂のコンテンツがナイアンが新たに制作していたアプリの目指す方向性と合わなかったというのもあろうが、やはりピクミンが任天堂のフラッグシップコンテンツで最も最弱だからというのもあろう。任天堂はピクミンというコンテンツの未来をNianticとその背後にあるNIAとそしてARとXMが秘めている可能性に賭けたのだろう。それが宇宙船乗りオリマーの物語への天啓を与えてくれた、任天堂のゲームクリエイターがピクミンと呼び始めた「虫のような植物のような不思議な生き物」への恩返しのつもりだったのだろう。

ところでピクミン達に何があった?

そして11月1日の本邦でのピクブル配信開始後ダウンロードして早速始めてみたのであるが、いきなりのピクミン全滅ならぬ全休眠という展開からのスタートである。
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こんにちは! Pikmin Bloomへようこそ!
この世界には、 実は「ピクミン」という、動物のような、植物のような、小さくて不思議な生き物がいます。

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ピクミンは人の目では見えませんが、 あなたのスマートフォンを通して見ることができます。
しかし今、多くのピクミンが 「苗」へと姿を変えて眠ってしまいました。

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元の姿を取り戻し、ピクミンで賑わう世界にするためには、あなたの助けが必要です。

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これは、ピクミンの苗を育てることができる特別なバックパック、「プランターパック」です。
植えた苗は、あなたが歩くことで生まれる「歩数エネルギー」を吸収して成長します。

チュートリアル時の最初の説明から察するに、後にピクブルで把握可能となったピクミン達の住む世界におけるピクミンは任天堂作品で描かれてきたそれと異なり、その身に何かあればカブやレッドビートやラディッシュのような鉢状の殻を作って休眠状態──ピクブルに於いては便宜的に「苗」と呼んでいる──になる性質があったのだろう。そしてNIAがは任天堂からの情報を元にピクミンのいる世界に干渉し始めそこにおけるXM研究を開始したは良いが、それによってあまりにも多くの休眠状態に陥るピクミンの個体に遭遇したのみならずピクミンの頭部の葉状の器官が蕾状になった後何らかの要因で花状の変化した後に散布された破片──便宜的に「花びら」と呼んでいる──から生じる植物の存在がピクミンの生活環境の維持に良い影響を与えていたなど事も判り、何しろその世界の生態系はピクミンの活動ありきのものだったということまで判明しこのままではやっていることがただの環境破壊でしかなく人為的にでも良いから無理矢理生態系を再構築しないと大変不味いことになると解決策を模索するうちに、ピクミンが休眠状態から回復する為には外部からの何らかのエネルギーを必要とする事が判ったのだろう
そのエネルギーを人工的に生み出す為に開発されたのがプランターパックの元となる技術で、それを効率良く起動させる手段として現生人類であるホモ・サピエンスの歩行が最も適していたのでバックパックタイプ型デバイス「プランターパック」にして、後はそれを誰かが背負って歩けばよくピクミンの生育環境に必要な花はその発生源をピクミンから集めて手当たり次第植えていけば良いとなったのだろう。
しかしそのプランターパックを1218世界はじめとする他のマルチバースに物理的に持って来ることは出来ず、ならばどうするか。
そこでNIAが着目したのが任天堂独自のアバター・Miiであろう。世間ではピクミンはあくまで任天堂のゲームコンテンツという認識に過ぎず、アバターとしてMiiを使うことは任天堂側にとっても何かと好都合でしかない。しかしユーザーが現時点でMiiを利用するにはニンテンドーアカウントが必須で、それ故『ポケモンGO』でもやらなかったニンテンドーアカウントとの紐付けを承諾したのだろう。任天堂はそのくらいのことはNIAによるXMに関する技術を手にするための代償として決して安くは無いとしても「十分お釣りがくる」と判断したのだろう。勿論ニンテンドーアカウントを持っていない人にも考慮してアプリ側にも少数ながらアバターの外見の選択肢を用意しておけばよい訳で。
後は、万が一ピクミンの群れが攻撃してくるような事があってもある程度耐えられるアバターを用意すればいい。しかもそれを満たすにはホコタテ星やコッパイ星の住人と同じ大きさでは頼りないが何も1218世界の人間の大きさを用意する必要もない。最もピクミンには「発生時や休眠状態からの回復時に引き抜いた者に対して絶対的な信頼感を持って付き従いやすい」という特性があるのでアバターが休眠状態から回復可能となったピクミンを引き抜き続ける限り攻撃される心配はないが、そこはNIAが今まで培ってきたシミュラクラやリモート・パーティシペーションについての研究とそれに関する技術が応用されたのではなかろうか。
だがそこは我らが恐怖のうっかり大王NIAの事、恐らく1218世界における「エピファニー・ナイト(啓示の夜)」をピクミンの住む世界でもやらかしたのではなかろうか。そういえばピクブルの正式サービス開始が発表される少し前にNianticや任天堂が提供するゲームアプリのAndroid版がサービス終了が決定していた『ドクターマリオワールド』を除き悉くほぼ同時にダウンしたというトラブルが起きたことが有ったが……いや、でもあれはやはり1218世界の事象に過ぎないであろう。しかし、幸いな事にそれによって一時の眠りについた多くのピクミン達を再び目覚めさせ、ピクミン達の住む生態系を再構築する術は既に出来ている。
そしてピクミンが頭部の先端にある葉状の器官を花の形状にするのにはエキス(ネクター)と呼ばれる液体が必要であるがこれが他ならぬXMの集積物であったのだろう。ならば1218世界のポータルネットワークをピクミンの住む世界に反映させてXMの流れをコントロールすれば良い。その結果恐らく本来は何らかの要因で出現していたビッグフラワーとキノコの出現場所がIngressにおけるポータルの場所と一致するようになったのだろう

ポストカードにXMを巡る思惑を乗せて、そしてデコピクミンとは一体何なのか

しかし謎なのはビッグフラワーとキノコの出現場所はIngressポータルの一部であるにも関わらず、ピクミン達が何かと拾ってくるポストカードや同一個体のピクミンから「花びら」を集め続けた後にピクミンが「デコピクミン」になるために苗として眠っていた場所にわざわざ出向いて拾って来るシールやクローバーやボトルキャップやコック帽……じゃなくてローストチキンの端につける紙や樹脂フィルム製の飾り(マンシェットやチャップ花と呼ばれているもの)といったもの類いである。本来ああいうものはピクミンの住む世界には本来無かった筈ではと自分は見るのだが、NIAが任天堂の助けを借りつつXM研究をするうちにピクミン達に冗談半分で与えてみたら案の定ピクミンが興味を示したとかそういうオチだったのでは無かろうか。それに対してポストカードは恐らくポータルネットワークに関わる研究目的の為の者でピクミンの「おつかい」に反応して自動的に各ポータルから出現できるようにし、またピクミンがポータルネットワークを利用して各ユーザーの元に一時的に移動出来る為のものにしているのだろう。
休眠状態の苗の発見地の情報を管理するに当たりGoogleMapやOpenStreetMapに登録されている情報を利用し、休眠から目覚めたピクミンから「無理矢理花びらを集め続けた事のせめてものお詫び」として苗として眠っていたその地点に因んだアクセサリーを用意し、苗の存在を把握したと同時にその地点にアクセサリーをプレゼントボックスに入れて置いておくようにしたのではないか。後は苗をプランターパックのスロットにセットしている間にでもそのピクミンがいずれ眠っていた場所に一度帰るように「吹き込んで」やれば良い訳で
ただもしそうであるならば最初からデコピクミンとして目覚める「大きな苗」は一体何なのかという話になるが、恐らくピクミン全個体休眠という事態が起きる前にNIAと任天堂によるXM研究によって強制的に休眠させられた個体なのではなかろうか。そういえばニンテンドーアカウントの初回連携で入手出来る大きな苗の中で眠っていたピクミンは(そしてそれ以外に入手する術がなく同じ苗は二度と入手不能である可能性が高い)マリオの帽子のチャームを被った京都の任天堂本社の位置情報が紐付けられたデコピクミンなのである。
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そして陣営争いなきIngress=ピクミンブルームと共にある日々は暫く続く

恐らくだいたいNIAと任天堂のせいでIngressポータルが反映された地点に出現するビッグフラワーであるが、これも当初は双葉の苗の状態で、そのままでは何も起きず各ユーザーがピクミンを引き連れて一緒に花を植えることで漸く成長するのである。そしてビッグフラワーひとつが花を咲かせるのに必要な花を植える本数は300本だが、元々はそれにもばらつきがあったものがポータルネットワークを介したXMによるコントロールで300本植えれば確実に花を付けられるように調整しているのだろう。実際、花を植えていくうちビッグフラワーが苗から急激につぼみに成長した後や閃光と共に花を咲かせた後にその上に降り注ぐ光の花吹雪はかなりXMと思われる何かを感じるものだ。
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だが良く判らないのはビッグフラワーを咲かせた後に出現したり、ピクミンを引き連れて移動中にピクミンがどこからともなく拾ってくるエキスの元になるフルーツの存在だ。そもそもエキス自体もXMの集積物であるのならばそのまま地上に出現すればいい筈で元々はそうであったのだろうが、それでは生態系再構築が効率よく進まないと見て、1218世界をはじめとしたホモ・サピエンスが暮らす世界の果物を模した形をXMをコントロールすることによって与え、ピクミン達をおつかいに出すことで回収しピクミンが花びらを生成するためのエキスを確実に入手出来るようにしたのではなかろうか。

ま、ここまで全てIngressエージェント末席の邪推、というか妄想なんですけどねw

そういう訳で、元々陣営争いなきスキャナーがあれば……と思っていた自分は暫くの間文句を言いつつピクブルのアプリを開き、ピクミン達を連れて歩く日々が続くのだろう。まあそれがこのアプリのサービス終了まで続くのか、それともどこかであっさり飽きてしまうのかは任天堂案件だけに「天のみぞ知る」というより、「天にすらわからぬ」のかもしれないが。

『けけロイド』の前に全ての「けけロイド」は一度、死んだ。されどとたけけが「メジャーデビューした元ボカロP」と同じ地平に立てるかというと……

また今回も目が滑る長ったらしい悪文記事を書く。所詮は物事知らん能無しなヤツのケチ付け目的の愚痴記事の域を越えたものではないので、なんじゃこの記事は(呆w)と思った方は「そっ閉じ」されることをお勧めする。

長い長い愚痴(前置き)

Twitterで日頃何かと日本という国やその社会や文化への愚痴や、その愚痴の一環として任天堂案件を腐すような事を書いている一方で、自分のAndroid携帯にはポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』をはじめとした任天堂のゲームアプリを入れているのみならず、Twitterのファルコン・ランチネタに端を発する所謂スマブラランチアカウントのn番煎じネタとして「どうぶつの森シリーズのとたけけのランチアカウント」を不定期でやっているようなヤツでしかない自分がこんな事を言うのも正直かなりアレなのだが、以前の当ブログ記事でも書いたが2020東京五輪の開会式をきっかけに日本のゲーム音楽が変に脚光を浴びてしまった件については自分は正直未だに腹立たしく思っている。オタク系ネット民の多くが2020東京オリパラ開催の是非を巡る議論で本邦の音楽業界含めた二次元でない文化コンテンツ方面を過剰に腐す形で悪目立ちし、五輪開会式でゲーム音楽が使われた途端にクールジャパン案件への疑問符や本邦におけるオタク文化の祭典であるコミックマーケットの会場である東京ビッグサイトが五輪開催の為に接収された事の怨嗟を忘れて大喜びしたというオタクでない層から見ても醜悪だったであろうネット上の光景は今後も覚えておく。
最も自分は天寿を全うした感があるすぎやまこういちが本邦のダメな歴史認識流布に荷担していた件を2000年代末に知って以来、ああいうクズを有名にした日本のゲーム産業なんて正直潰えてくれて構わんと思っている程なので、マジですぎやまこういちが生前にその言動を以て「焼かれる」事が無かった事も「滅びよ日本(怒)」としか言いようがないし日本政府が彼に文化功労者の栄典を与えた事は悪行にも程がある。安倍政権時代が終わる前年に「マリオのお父さん」こと宮本茂に本邦政府が文化功労者の栄典を与えたのはすぎやまにそれを与える道筋を付ける為でもあっただろう。ただすぎやまはドラクエ案件で有名になる以前に元々ニッポン放送の音楽スタッフとしてTV・ラジオ業界の音楽方面でそれなりの実績を有していた人物でもあり文化功労者に選出される前に案の定音楽方面への功績をもって叙勲されていた訳で、なんというかドラクエで改めて有名になった事以上にフジサンケイグループの縁が祟ったかという感がしなくもなく、そういう意味では彼の件も結局は「日本さえなかりせば」という話だったとしか言い様がない。
さてその「日本さえなかりせば」というより日本発の2ch系ネット文化さえなかりせば……という英語圏発のネット上の流行がちょっと前に一部で政治系ネット民絡み案件としても話題になっていたヴェイパーウェイヴとそこから派生したインターネットミームの類とやらではなかろうか。以前それについて説明しているネット記事に目を通したが(実質高卒が最終学歴な)自分としては「それらって日本語圏のネットでニコニコ動画にUPされてきたような代物ですよね?」という反知性丸出しの感想しか出て来ず、まあアリだとは思うけど深入りする気も起きない。あとヴェイパーウェイヴの元ネタが1980~1990年代の日本のテレビゲームを含めた娯楽コンテンツと聞くと、その頃のJ-POPが海外で今頃ウケているという話も実は同類かつ同根の現象じゃないのかと言いたくなる訳だが、と思ってたらやっぱり一連の事象と見られるようで。
tabi-labo.com
ヴェイパーウェイヴとその派生・周縁案件のうちネットミーム系のものはオルタナ右翼案件と結び付いたという指摘がある分、余程のマニアか保守系ネット民を除き変に持ち上げられる事は暫くないとは思うが、過去のJ-POPが世界でウケているという話は自分には「日本スゲー」的な取り上げられ方してる感があってなんだかなあという感じしかしない。J-POPは既に斜陽であることはわかっている人も多いと思いたいが、その全盛期を遥かに上回る流行ぶりの今をときめくK-POPもまたJ-POPの流れを組んでいると言われるとそれもそれで結局「日本スゲー」的な見方でしかないと思ってしまう。J-POPもK-POPもその「お手本」は欧米の娯楽音楽だろうに。「クールジャパン」という馬鹿で間抜けでカッコいいという意味でのクールさが無いどころか名前の通りお寒い案件を正当化するような娯楽文化評はもういい加減この世から消えていただきたいのだが……

ヴェイパーウェィヴの先駆者みたいなものだったのかもしれないどうぶつの森のとたけけ案件

ここからが今回の記事の本題。自分が2020東京五輪開会式の件でゲームファンなオタク系ネット民のみならず本邦のゲーム業界にも改めて呆れる以前、たまたまネットで見つけて脊髄反射的に「ご冗談をw」と思ってしまった記事がある。2019年にKotakuに投稿されたどうぶつの森シリーズのとたけけに対する礼賛記事だ。
kotaku.com
なお自分がこの記事を知ったのはそれの日本語翻訳記事を見つけた事がきっかけである。
note.com
その時の自分の脊髄反射的なツイートがこれ。ヴェイパーをウェイバーとか書いてしまっている事にかなり後で気が付いてしまい修正する機会を逃してしまった。恥ずかしい。


なおこのKotaku記事の内容、英語圏における歴代どう森シリーズに実装されてきたとたけけ曲のカバーやニコニコ動画発の音楽MAD系ネットミーム「けけロイド」に触発されたであろうとたけけネタの音楽MADの動向の一端を知るには良い記事である。ただし文中でポケ森の発表時の動画と紹介されてリンクが貼られている動画はとびだせどうぶつの森amiibo+ダイレクト英語版である
因みに自分はどう森シリーズのとたけけについてはNianticの『Ingress』をプレイするようになった後それのユーザーコミュニティに所属してそこのメンバーがポケ森をやらなかったら今でもあまり興味を持たずにいたかもしれないので、ゲーム音楽が所謂「ピコピコ音」から完全に解放された以後の時代において最も影響力を与えたミュージシャンがどう森シリーズのとたけけとか言われると、それって実のところ一部のゲームファン限定の話ではないのか? としか自分には思えないのだ。
しかしゲーム音楽含めた音楽全般の事について無知な自分がこう書くのもどうかしているが、どう森シリーズのとたけけ曲はゲーム音楽の中でも既存の音楽のパロディ或いはオマージュという方向を露骨なまでに行った代物で、ゲーム作品を通じて提供された「古今東西の音楽の目録的なもの」の域を越えることは無い代物だと思っている。ある意味日本がほんの一時の経済的繁栄を切っ掛けに思い上がり調子をこいていた1990年代前半ですら所詮欧米先進圏の文化の劣化コピーでしかない薄っぺらいものと自嘲する向きのあった、そしてそれ故に世界で認められると日本の中では世界進出を果たしたぞと過剰に持ち上げられる悪弊が相変わらず酷い本邦の文化の極みのひとつだと言えるかもしれない。まあとたけけ曲に限らず任天堂作品案件が元々そういう代物であり、だからこそスーパーマリオシリーズの主人公であるマリオが2020東京オリパラの広報に使われ五輪開会式の初期案の時点で開会式の演出に採用される予定だったのだと言ってしまって構わないだろう。
そして自分は音楽の事に限らず世の中の諸事象についてとんだ情弱だから故にヴェイパーウェイヴと呼ばれている事象のざっくりとした説明を見て「ヴェイパーウェイヴとその派生案件=ニコニコ動画的なるもの」という雑な認識になっていたところに先のKotakuのとたけけ礼賛記事を見つけてしまった事で、「とたけけ曲とそれに触発された二次創作案件って結局のところヴェイパーウェイヴとその派生案件の同類にしてその一端に過ぎないのではないのか??」という雑な見方をするようになって、そしてその見方は自分のヴェイパーウェイヴに対する認識同様恐らく間違っている可能性が大きそうなのだが修正する気がどうも起きない。
実際とたけけ曲のうち、特に現代音楽系のものは辛辣な言い方をすればそれらもまた日本の娯楽音楽同様の欧米圏のそれらの劣化コピーでしかない代物であり、とたけけ曲そのものも古今東西のあらゆる音楽ジャンルのサンプルという設定なのはそれらの残念過ぎる楽曲タイトルからも明らかだ。それ故にとたけけの奏でる曲は音楽としては大いにアリだし個人的にはウケる曲もあるのだが、正直学校の音楽の授業っぽさがあってどんなに曲が良くてもどこか退屈なのである。
しかしネットの世界は狭い世界の中におけるウケ狙いで盛り上がるもので、ニコニコ動画発のどう森二次創作ネタの「けけロイド」と呼ばれる音楽MAD動画の大半は既存の曲のカバーで、それも初期はニコ動ユーザー好みのゲーム音楽・東方ProjectシリーズBGMの二次創作曲(所謂「東方曲」)・ボカロ曲・アニソンのカバーだったりで、そもそもMADという事もあってそれら自体がニコ動ユーザー受けを狙ったカオスな代物が多かった。
以下その一例を幾つか。これは東方ProjectシリーズBGMのうち最も名高いであろう『東方紅魔郷』よりU.N.オーエンは彼女なのか?』のカバー。
nico.ms
こちらはcosMo@暴走P初音ミクの消失』のカバー。
nico.ms
そしてこちらはwowaka『裏表ラバーズ』のカバー。一見まともな動画に見えてしれっと驚き顔のみしらぬネコが登場するという案の定ぶりw
nico.ms
IOSYSによる東方曲でネタ色があまりにも強い迷曲のひとつとして有名な『チルノのパーフェクトさんすう教室』のカバーもある。
nico.ms
勿論任天堂作品の曲を歌わせたものもある。ちなみにこれはとたけけの元ネタである任天堂のコンポーザー・戸高一生氏が嘗て作曲した『カエルの為に鐘は鳴る』BGMの『王子の冒険』をけけロイドでカバーしたという感涙とまでは行かなくともいい意味でニヤリとさせられる代物。
nico.ms
そしてこちらはアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』よりまっがーれ↓スペクタクル』のカバー。因みに日本語圏のネット上では某とたけけ曲自体がそれのパクりではという邪推ネタがあったw
nico.ms
これは『とある科学の超電磁砲』OPのonly my railgun』のカバー。
nico.ms
宮本茂登場以後の任天堂が手本かつ目標としてきたディズニー作品のアニソンカバーもある。これは『アナと雪の女王』テーマソングの『Let It Go』のカバー。
nico.ms
そして遂にJ-POPをけけロイドでカバーする者が登場し、あつ森こと『あつまれどうぶつの森』発売後にその流れは加速していく。これらは初期けけロイド動画では当たり前だったMADならではのカオスぶりは消え、純粋に「とたけけがカバーしている」系の動画へと洗練されている。これらの中にはけけロイドという言葉を使わず「とたけけが歌う」という由のタイトルが付いている事が多い。
これは米津玄師『海の幽霊』のカバー。
youtu.be
上記『海の幽霊』カバーの制作者の方があつ森発売後に制作されたKing Gnu『白日』のカバー。
youtu.be
J-POPというよりはアニソン扱いになりそうなLiSA『紅蓮華』のカバー。
youtu.be
YOASOBI『夜に駆ける』のカバー。
youtu.be
なおJ-POPをカバーしたものでも初期のけけロイド動画に近いカオスなノリのものが無いわけではない。これはPVがネットミームとして消費されていたサカナクション新宝島』をカバーしたもの。
youtu.be
だが元々ニコ動発祥案件のこと、中には「コンギョ」もしくは「攻撃戦だ」と呼ばれる事が多い北朝鮮のプロパガンダ曲『攻撃の勢いで(공격전이다)』をカバーした『けけコンギョ』というかなりアレな代物まである。なお使われている画像は日本語圏のネットミーム汚染の代表格である淫夢ネタの出典元こと鬼畜系同性姦作品『真夏の夜の淫夢』が元ネタであるという二重三重にアレな代物である。
nico.ms
『けけコンギョ』程ヒドいネタではないが、ガーナの「棺桶ダンス」ことダンシング・ポールベアラーズのネットミームをけけロイドでカバーしてみたものもある。(なお制作は前述の『新宝島』カバーの制作者による。)
youtu.be
とたけけ絡みの音楽ネタ二次創作はけけロイドだけではない。とたけけ曲のライブバージョンはどう森シリーズのNPC達が話す「どうぶつ語」で歌われているという設定なので、それに現実世界の言語で歌詞をつけ更にはそれを歌うというけけロイドと比べて創る人を選ばない二次創作も行われている。それらについては正直けけロイドよりも面白くないので割愛するが、その一例としてOSTER projectによる作詞者不明の『けけアイドル』非公式歌詞をボーカロイドでコピーした動画を挙げておく。
youtu.be
因みにこの『けけアイドル』の非公式歌詞であるが、それが実装されたとび森こと『とびだせどうぶつの森』発売後にニコ動にUPされた以下の動画のコメント欄にその非公式歌詞の元になったと思われるものが書き込まれていたりする。
nico.ms
更には現実世界の既存の楽曲のジャケットのパロディなファンアートまである。
front-row.jp
getnews.jp
しかしこの件を取り上げてネットニュースの記事にしたのが2chやニコ動と縁深いガジェット通信なのは案の定と言うべきだが、海外セレブ情報誌の編集元が運営しているフロントロウが記事にしたのはやや意外な感がある。が、実は海外の芸能ネタ関連の面白ネットミームでもあるのでネタにされたのも当然と言え、そういうところも含めてどう森シリーズのとたけけはやはりヴェイパーウェイブの一端にして先駆者であったという大変雑な評価が出来るかもしれない。因みにヴェイパーウェイブの発端と見なされている作品が登場したのは2010年との事だがニコ動にけけロイドが登場したのは2008年3月。これは街森こと『街へいこうよどうぶつの森』そして戸高氏がディレクターを勤めた音楽ゲームWii Music』という商業的な成功を期待されるも売上が芳しくなく後に株主向け質疑応答にて公開処刑を喰らった2作品が発売される半年以上も前の事だ。
dic.nicovideo.jp
しかもけけロイドの発端となった動画は4chan由来と見られるネットミーム「ロイツマ・ガール」から派生した『イエヴァン・ポルカ』カバーの音楽MADというニコ動発のネットミームのひとつだったという如何にもニコ動的な事象である。けけロイドの登場には後にヴェイパーウェイヴの流布の場のひとつになった4chanにおけるネットミームの存在が影を落としていた訳だ。(なお制作は前述の『初音ミクの消失』『チルノのパーフェクトさんすう教室』カバーの制作者による。)
nico.ms
ついでに言うなら戸高氏への好評価が任天堂作品ファン(それも信者呼ばわりされるようなレベルの者)以外に広まったのは、彼が関わった過去の任天堂作品の多くにギミックの一環として実装され、またどう森シリーズのとたけけ曲のひとつにもなっている「けけソング」について取り上げた英語圏の2006年のYouTube動画を編集したものが2011年に日本語字幕付きでニコ動にUPされ、それが日本語圏のオタク系ネット民を中心に「日本スゲー」論の亜種とでもいうべき「任天堂スゲー」論的な周知をされていったからなのではと自分は見ている。
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因みに上記の動画の元動画は以下の3つ。
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最も戸高氏本人の音楽に対する認識はあつ森発売後にBillboard公式に掲載された彼へのインタビュー記事からも大変謙虚なものである事が伺えるので、彼への好評価の広がりは当然の結果なのかもしれない。
www.billboard.com
因みに上記記事の日本語版はこちら。
www.billboard-japan.com

とたけけを巡る任天堂の思惑と戸高一生以外の任天堂の「とたけけ」達

実はどう森シリーズのとたけけ案件についてはタチが悪い事に任天堂自らその由来である戸高氏と紐付ける事を意図的にしてきたところがあるという事だ。まあとび森発売前のとび森ダイレクトのようにどう森シリーズのプロモーションの範囲内でやるうちはまだ許せるし理解できるとしても、それ以外のところでやってしまっていたのがなんだかなあという感がある。
2003年に雑誌『ニンテンドードリーム』の読者向けイベントとして開催された「マリオ&ゼルダビッグバンドライブ」に戸高氏が出演した際、彼がヨッシーの声の人であるという紹介でもすればいいのにどう森のとたけけの画像を貼った板を持ってきていたり、
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『Wii Music』のメディア向けカンファレンス及びプロモーションビデオでも宮本茂がどう森のとたけけのモデルとなったスタッフが制作に関わった作品であることを強調していたりする。なお『Wii Music』についての顛末は前述の通り。
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その結果何が起こったかというと、どう森シリーズの音楽案件に対する評価、とくにとたけけ曲に関する評価が戸高氏と露骨に紐付けられてしまっていることだ。YouTubeにUPされているとたけけ曲動画のコメント欄を見ると実際の作曲担当が明かされていない曲が多数なのに戸高さん凄い的な内容のコメントが散見されていたりする。勿論どう森シリーズのサウンド案件の責任は彼に集中することになるのである程度そうなるのは当然と言えば当然とも言えるのだが、チーム作業で制作しているのがスタッフクレジットで明白になっているゲーム作品の音楽案件において特定のスタッフに対しそこまで露骨な好評価がされている事例って他にあるだろうか? とも思ってしまう。
ただこのような事象についてはコナミのBEMANIシリーズが2000年代末から2010年代後半にかけて制作に関わる自社所属のコンポーザー陣を前面に出した内輪ネタや露骨なウケ狙いもアリのプロモーションを展開し、その中でニコ動ユーザーにネタ的に弄られるべくして弄られる言動に出るも(ユーザー層の傾向のせいもあるが)大きな顰蹙を買うことも無く、またコナミに対する失望も相まって露骨な好評価を得るに至ったwacこと脇田潤氏や評価を大きく落とさなかった藤森崇多氏といった事例もあるので、実のところスタッフの知名度やゲームファンなネット民にどれだけウケるかによっても評価はかなり左右されるものなのかもしれない。
最も今後はゲーム業界もクリエイターとしての実力のみならず「人道に悖らない方向での人徳の高さ」がこれまで以上に要求されてくることになろうことは大規模なセクハラ問題が明るみになったBlizzardを見れば明らかで、その問題の件を受けて退職したスタッフのひとりジェシー・マクリー氏に由来する名前がつけられていた『オーバーウォッチ』のマクリーが「本来の名前を名乗る事にした」という設定と共にコール・キャスディに改名された事を見ても、キャラクターの名前に制作スタッフに由来する名前を付けたりスタッフの内輪ネタを使ったプロモーションを行うのは実に諸刃の剣なのだ。どう森シリーズのとたけけは正にそういうリスクを抱えたキャラでもあり、だからこそとたけけをプロモーションに利用した『Wii Music』が発売から間もない時点で商業的に芳しくないと判った時点で任天堂公式の「社長が聞く」に戸高氏をフォローする形での反省会記事が掲載されたのだと見ることも出来よう。
但しどう森シリーズ第1作目の『どうぶつの森』で登場しその後も歴代どう森シリーズ作品に実装されている初期とたけけ曲の作曲の殆どは戸高氏によるものではなく、後にスプラトゥーンシリーズのサウンドディレクターを務める峰岸透氏によるものだという事は強く言っておかねばならないだろう。アーカイブサイトWayback Machineに収録されている過去の英語圏向けゼルダの伝説シリーズ公式サイト「Zelda Universe」の制作スタッフインタビュー記事のページ「Inside Zelda」のPart.13においてその件が峰岸氏本人より語られている。

During the development of Animal Crossing, I was in charge of composing K.K. Slider’s “present music.” I needed to create more than 50 different musical tracks! It had to be from all kinds of musical genres, and it also had to sound like it was played on some cheap keyboard! I had no problem composing music from genres I was already familiar with, but I couldn’t create tunes from more than 50 different genres just using my imagination. I needed to study hard and learn about a variety of music to complete the project, and it was a very tough job to squeeze all that information into my head. 

https://web.archive.org/web/20061215002402/https://www.zelda.com/universe/game/twilightprincess/inside13.jsp

その為か、2021年6月に発売された『あつまれどうぶつの森オリジナルサウンドトラックとたけけミュージック集Instrumental』付属のブックレットに掲載のクレジットには作曲に関わった任天堂のサウンドスタッフの方々の名前の一番上に峰岸氏の名前が書かれている。
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戸高氏と峰岸氏の他に名前があるのはとび森のメインタイトル曲の作曲者である片岡真央(富永真央)氏、とび森で実装された『けけアイドル』作曲者のひとりにして『ピクミン3』のブリトニーや羽ピクミンのCVを担当した朝日温子氏、スプラトゥーンシリーズの『シオカラ節』作曲者の藤井志帆氏、峰岸氏同様に初期どう森シリーズに関わりあつ森で再びどう森シリーズに関わった永田しのぶ(田中しのぶ)氏である。
但しあつ森メインタイトル曲にしてとたけけ曲でもある『みんなあつまれ』作曲者である岩田恭明氏の名前は掲載されていないのはどうかと思うが初期どう森シリーズに関わった永田権太氏の名前が無いのも興味深い。因みに藤井志帆氏は街森サントラ集『街へいこうよ どうぶつの森 ~森の音楽会~』のボーナストラックのうちの一曲である『けけソウル』クラブVer.のリミックスを担当されていたがとたけけ曲そのものの作曲にも関わっていた事が明記されたのはあつ森サントラ集のブックレットが初であろう。以下の写真2枚は街森サントラ集のリーフレットにあったクレジット及びボーナストラックの楽曲コメントである。
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この時の藤井氏による『けけソウル』クラブVer.の影響かどうかは知る術もないが、この後とび森において「クラブDJの姿のとたけけ」ことDJK.Kが登場したのは周知の通り。
2019年11月のNintendoLiveにおける「ハイカライブ2019」の前座にとたけけが登場したのも、あつ森発売を控えていたことに加えてスプラトゥーンシリーズのサウンドディレクターである峰岸氏こそもうひとりの「とたけけ」であり、峰岸氏に次いでスプラシリーズの音楽を支えている藤井氏もまたそのひとりであった、という事もあるのかもしれない。但しこのイベントで披露されたとたけけの曲は『みんなあつまれ』だったが……
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そして音楽面のみならず、とたけけというキャラクターを純白のテリア系の姿の犬族として描くどう森シリーズのアートデザイン担当者やとたけけのセリフを司るスクリプト担当者もまた「とたけけ」のひとりであろう。因みに2006年に小栗旬がとたけけのCVを演じたアニメ映画版どう森が上映された後にどう森シリーズのデザイン統括者は寡黙な鳩族の喫茶店店主マスターのモデルという説が、そして『Wii Music』のスタッフインタビュー任天堂公式サイトの「社長が訊く」に掲載された後にどう森シリーズのスクリプト統括者はモグラ族の説教オヤジなリセットさんのモデルではという説が一部で流布したようで、とび森発売後のとび森ダイレクトに於いて制作スタッフ陣がその説に納得しつつ否定した事があった程である。

『けけロイド』という名のネットミーム「けけロイド」に向けられた最終兵器かもしれないボカロオマージュ曲

とまあ、どう森のとたけけ案件については個人的には色々思うところがあるのだが、2021年10月のあつ森ダイレクト観るまでよりによってとたけけ案件で驚愕するネタが投入される事になろうとは思ってもいなかった。今年11月初旬のあつ森の最終大型アップデートで実装された新たなとたけけ曲のひとつ『けけロイド』である。
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土曜の晩にお馴染み(但しあつ森では必ずしも土曜の晩に行われない時がある)とたけけライブ版はこちら。
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あつ森の追加DLC『あつまれどうぶつの森ハッピーホームパラダイス』で実装されたDJK.K仕様のとたけけ曲リミックスメドレーにも勿論『けけロイド』のリミックスが入っている。
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そのタイトルと曲ジャケットのイラストを見て、ただでさえボーカロイドやその類似案件のUTAUに近い歌声のとたけけでボカロネタやるんかいと思うのみならずニコ動発のネタであるけけロイドを遂に公式が回収しに来たのかと思うも、ある意味ボカロ曲の曲調の元ネタのひとつは日本のゲーム作品におけるゲーム音楽なのではとも思ってみたりで戸高氏以下どう森シリーズに関わる任天堂のコンポーザー陣ならボカロ曲っぽい曲は書けるだろうとも思ったりもした。
生憎自分はあつ森以前にNintendoSwitchなる何かと問題を抱えたゲーム専用ハードなどまだ持っておらず、該当の曲を知るにはあつ森とたけけライブのプレイ動画のYouTubeへの投稿待ちという大変他力本願な状況だった。そしてYouTubeにUPされた『けけロイド』動画を観た自分は、やはりどう森シリーズのスタッフ陣は「けけロイド」という言葉の意味を変えようとしたのかなと思った。まあ実際にそこまで考えて創られた曲かどうかまでは作曲に関わったスタッフが内情を明かすことがない以上は判らない。
あつ森アプデにおける『けけロイド』実装は、けけロイド案件よりも桁違いに醜い案件である4chan発の『カエルのペペ』ネットミームに対するペペの生みの親である漫画家マット・フューリー氏の対応に似たものであったのかもしれない。
gendai.ismedia.jp
とたけけとペペとの違いは、現時点でとたけけは幸運なことに「社会におけるマジョリティ層によるこれまでのダメな所業やそれを支えてきた思考を正当化する」為のアイコンに使われるケースがまだ少ない、という事の1点に過ぎない。だが日本語圏のネット上において任天堂案件を過剰に持ち上げてきた層についてはTwitterにおける自分の観測範囲内だけでも残念ながら歴史的な必然の結果で実は回避不可避だったであろう「日本の経済的繁栄期終焉とそれに伴う国際社会における日本の存在感の必然的な低下」を嘆く本邦の保守派属性の者及びその影響を受けた者が相当いると見なさざるを得ないところがあるだけに、どう森のとたけけ案件がネット民の手で今後どうなるかはわからないのである。
英語圏のSNSにおいて鬱屈を抱えた保守派ネット民が自らの義憤から産み出した悪意の器として利用されたペペはその死のエピソードを以て己の姿を借りて電子の海にばら撒かれた悪意との対峙を試みたが、とたけけはボカロ曲オマージュの持ち歌を以てネット民の玩具にされた己の歌声を取り戻しに来たのかもしれない。実際あつ森に『けけロイド』が実装されて以後「けけロイド」でネット検索すると当然ではあるがとたけけ曲の『けけロイド』ネタもニコ動発のけけロイドと一緒に表示される状況になっている。どう森シリーズ制作スタッフ陣そして任天堂はこれまで日本語圏ネット上に於けるネットミームでしかなかった「けけロイド」という言葉をあつ森の最終大型アプデによって自らの手中に収めた訳である。「けけロイド」というネットミームは、とたけけ曲『けけロイド』によって一度、死んだのだ。
因みにごく最近日本語圏のYouTubeにUPされたけけロイド動画には動画制作者によるオリジナル曲を発表したものが登場している。だがこれはあつ森の最終大型アプデ予告によってとたけけ曲としての『けけロイド』の実装が判明した後からアプデ実施の間に創られたものである。
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それでもどう森のとたけけは「元ボカロP」には多分なれない

しかし、どう森シリーズのとたけけが米津玄師やYOASOBIやヨルシカのような「メジャーデビューした元ボカロP及びその音楽ユニット」と同じ地平に立てるのか、それ以前に初音ミクはじめとしたボカロキャラと同じ地平に立てるのかというと微妙に思える。なぜならどう森のとたけけは初音ミクをはじめとする作曲用ツール+αの存在としてのボカロキャラと異なり任天堂のゲーム作品のアイコンキャラのひとつに過ぎないからだ。ぶっちゃけバンダイナムコのアイドルマスターシリーズをはじめとしたアイドルゲームのキャラや、任天堂作品であればスプラトゥーンシリーズに登場するシオカラーズやテンタクルスはじめとした劇中で流れる曲を作ったミュージシャンという設定のキャラと同じ存在である。そしてこう言うとゲーム好きなオタク系ネット民は激怒するだろうが、それらミュージシャン及びそれに準ずる立場という設定を与えられたゲームキャラが現実世界の各地における娯楽音楽の第一線を走るミュージシャンに本格的に「勝った」事例は現時点ではまだ少ないのではなかろうか。「勝った」例を挙げるとするならばアイマスシリーズ関連か、関連作品が先行し満を持しての今年のサービス開始後に大当たりして難無きを得た『ウマ娘プリティーダービー』のテーマ曲『うまぴょい伝説』ぐらいだろう。それらすらその「お手本」はモーニング娘。やAKB48をはじめとした現実世界の日本の少女アイドルグループでありそれらのヒットがあって受け入れられたゲーム曲である。スプラトゥーンシリーズの音楽もそこそこウケているとはいえ実のところコップならぬタコツボの中の嵐ではという感が否めない。
個人的にはAKB48以後の「女子中高生っぽいアイドル」の氾濫と初音ミクの登場がきっかけのニコ動のボカロ曲ブームは元々微妙な部分が目立つ日本の娯楽コンテンツを更にダメにした要因の大きなひとつではと見ているが、それはさておきアイマスシリーズやその影響を受けたゲームのキャラクターの持ち歌という設定の曲に対してどう森のとたけけ曲は一部にポップスのサンプルみたいな曲はあれど結局古今東西の楽曲サンプルでしかない部分を超えない以上、流行曲はおろかとたけけ曲の「お手本」に肉薄することすらまず難しいのではなかろうか。
しかもどう森シリーズでは何故とたけけが劇中における唯一無二のミュージシャンなのか、そして何故彼が現実世界の音楽ジャンルを知っているのかというストーリーが全く語られない。まあどう森シリーズの世界観設定は脆弱でありそれがまたシリーズの魅力と結びついているところがあるので仕方がないと言えば仕方がないが、スプラトゥーンシリーズにおけるシオカラーズやテンタクルス等の劇中に登場するミュージシャン設定のキャラに生い立ち等の設定が存在しているのは作品の世界観がそれを必要としたからだけでなく、どう森シリーズのとたけけというキャラについての反省や差違化もあるのだろう。
何が言いたいかというと、一部ネット民の影響を受けてゲーム音楽を持ち上げるのも良いがそれ以前にそうじゃないポップスはじめとしたゲームに一切関係がない音楽も大事にしろよ、あとどう森のとたけけ好きは戸高一生氏以外の歴代どう森シリーズ作品に関与してきたマジで全員レジェンド級なコンポーザー達にも注目してみてはどうかという事だ。
まあ日本の音楽シーンが衰退し滅びようが世界の先進圏における音楽シーンが健在である以上まずそんな事は起きないと思うがゲーム音楽の「お手本」となるポップス含めた現実世界の音楽が廃れたりダメな方向に行ったらゲーム音楽もその影響をいずれ喰らうのである。そしてその事は音楽以外の文化コンテンツについても同じだ。実のところ「高尚な」文化コンテンツも理解出来ないし大して興味も無い自分であるが、COVID-19パンデミック以後のTwitterを見ているうちに「表現の自由」を旗印にしてリベラルから左翼方向の者を腐しがちな日本のゲーム・アニメ・マンガやボカロ案件含めたそれらの影響を受けたキャラクターコンテンツ好きのオタク系ネット民の一部はもしかしてゲーム・アニメ・マンガやその影響を受けたコンテンツはそれ以外のコンテンツの影響あってのそれらなのだという事をわかっていないのではないのか? と思いたくなる時が冗談抜きに増えた。
あつ森アプデで追加されたとたけけ曲に『けけロイド』以外にもタイトルそのものズバリな『チルウェイブ』をはじめとした前世紀後半以降の娯楽音楽オマージュ曲が多く追加された事は、ゲーム音楽も現実世界の音楽シーンあってのものであるという事の証左に他ならない。だから元からオワコンな他の日本発の娯楽コンテンツ共々滅びろという感しかない腐ったJ-POPでも良いからゲーム音楽ではない曲、更に欲を言えばボカロ・UTAUやアニメともなるべく無関係な曲も今後のゲーム音楽の為に推すべし聴くべし。ま、世の中のゲームオタクの大半はそんな事をわざわざ他人から言われなくてもゲーム音楽以外の曲もしれっと聴いていると思うし、思想・信条・所業が好かないミュージシャンは叩くなり腐すなりするのは誰とて同じ、そして明らかにダメな音楽業界の所業や明らかにダメな考えを持ってしまったミュージシャンは批判されて然るべきだが。

Ingress Sitrep:京都洛北静原行(だいたいナイアンと任天堂のせい)・後編

前エントリの続き。
kakureneko-memos.hatenablog.com
前編同様、一部手直しした上での転載。元記事はこちら。
community.ingress.com

京都洛北静原行・後編

江文峠到着からの静原離脱危機一髪

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静原神社前の金毘羅灯籠については、形は他の金毘羅灯籠とは大きく異なるものの、すぐ横に金毘羅大権現と刻まれた石柱が建っておりそれであると判る。

江文峠に向かう京都府道40号線は静原小学校の東側にある京都バス城山バス停から少し東へ進んだ所で歩道が途絶え、この地域の人家もその歩道が途切れた辺りから峠に向かうトレイルルートでもある細い道を少し進んだ所で見当たらなくなる。
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集落の果て、道の舗装も無くなり建築資材置場と思われる構造物があるあたりを過ぎた所が峠道のスタート地点である。正直不穏な感じがするが気にしない。
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坂道に入る前はまだ何とか余裕。問題はここから先である。
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江文峠まであと300m。但し急坂の途中。
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何とか峠の坂道を登りきり、最終目的地の江文峠に到着。ここで山道としての峠越えルートは府道40号線を横切り再び山林の中へと入っていくが、金毘羅山の琴平神社に向かうには今回の金毘羅灯籠巡りミッションの終点である「三体不動明王 金毘羅大権現」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.113446,135.80482&z=15&pll=35.111772,135.808408 として登録されている石碑の向こうにある鳥居の先の山道を登る必要がある。なおここには今まで見てきた形の金毘羅灯籠は見当たらず、鳥居の両脇に細長い石灯籠があるだけだった。ここの石碑に記されている三体不動明王とはかつて金毘羅山中腹にあった江文寺の痕跡のひとつである不動明王とその脇侍の矜羯羅(こんがら)・制多迦(せいたか)を祀る祠の事を指し、その祠も「江文寺不動尊」ポータル https://intel.ingress.com/intel?ll=35.118318,135.805683&z=16&pll=35.116513,135.809042として登録されている。
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後は日没そして京都市街行きのバスの便の時間との勝負である。峠越えで大原側に降りる計画は最初からないので江文峠ポータルをポータルハックして金毘羅灯籠巡りミッションをクリアした後、ポータルキャプチャーして静原方向へのポータルとをリンクして静原側に引き返す事に。しかし日没まで時間がなく、数年前に下り坂で転倒して踝の骨を裂離骨折しその後も平地で段差に躓き転倒して再び踝の骨を裂離骨折してしまった事のある自分は、登山杖の類を持参していないこの状態で山道を引き返すのは危険と判断、本当は歩きたくなかった府道40号線の端を歩いて峠を降りる事にした。
そして案の定、時間帯がちょうど夕方ということもあって江文峠を通る車の数が段々と増えていき、歩道のない峠越え区間の端を歩いて降りていたこの時の自分は残念なことに通行していた自動車にとって邪魔な存在でしかなかった筈だ。

静原の集落まで戻った自分は、京都市街方面行きのバスが来るまでまだ時間があると思って再び静原神社へ。というのも江文峠のポータルから静原大明神ポータルと天皇社の静原神社ポータルをリンクする為にポータルキーを使ってしまったからだ。しかし静原神社に向かう途中で目の前を17時台の京都市街方面行きのバスが通り過ぎ、しかも土曜ダイヤということもあって次のバス、それも京都市街方面行きの最終便が来る2時間以上もの間、日没後の静原集落で待機する羽目に。
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という訳で天皇社と江文峠を繋ぐコントロールフィールドを作成。

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日没時の静原の地で見たものは、集落のバス停横の愛宕灯籠の灯りや天皇社の神前の灯といった、今なお生きている風習と信仰の灯であった。
静原神社境内には宮司住み込みの社務所はなく、そのような日頃から無人の神社の摂社である天皇社において日没時に献灯が行われているのは、神社の氏子による日課が欠かさず続けられているという事ではなかろうか。
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集落のバス停横に建っている愛宕灯籠。火伏(火災避け)の信仰のひとつとして知られる愛宕信仰の本拠地も京都・洛西の愛宕山にある愛宕神社であり、江戸時代以後の愛宕信仰も金毘羅信仰同様に寺社参詣目的の金策確保と地域民の結束強化を目的とした愛宕講と呼ばれる講の存在で維持されているが、静原の愛宕灯籠の灯は前述の京都市公式サイトの静原の里マップによると集落の住人が日替わりで当番を受け持ち灯しているとの事で、それはつまりこの地域の愛宕講の存在を示唆するものであろう。
そして静原御旅町のバス停で長らく待った自分は京都市街方面に向かうバスに乗り、辺り一面暗くなった静原の地を後にした。

今回の静原行きと平行しての金毘羅灯籠巡りミッションであるが、実は当初時間が有れば金毘羅山の琴平新宮社にも行こうと考えていた。しかしネット上の登山記録等の情報を見た限りでも、標高500m級という登山初心者向けの低山の中腹かつ比較的整備されている場所とはいえやはりそれなりの服装と装備をした上で行くべきと判断して断念。その一方で帰り際に安井金刀比羅宮に行く事も考えたが、北大路バスターミナルに戻って来たところでこれ以上帰宅が遅くなっても疲れるだけと判断して結局行かなかった。

採石場前の謎の灯籠と市原の愛宕灯籠

今回クリアした金毘羅灯籠巡りミッションの元になった京都・洛中からの旧街道沿いに残る金毘羅灯籠に関する「NPO法人京都観光文化を考える会・都草」公式サイトの記事によれば静市地区内に金毘羅灯籠がもう一基存在したかもしれないという。
それと関係しているのかどうかはわからないが、場所としては二ノ瀬トンネル南のT字路を静原方面へと曲がった先、建材業者の敷地の前の京都府道40号線の歩道上に石灯籠が一基置かれているのを市原から静原の間を移動する路線バスの車窓から確認し、後程その場所のGoogleのストリートビューを見るとやはり石灯籠が設置されていたのを確認出来たので、そのうち現地を訪れてそれが金毘羅灯籠の痕跡を示す為に設置されたものなのかどうか確認したい、そしていつか静原・金毘羅山の琴平新宮社にも行ってみたいと思いながらも、結局日頃の出不精ぶり故に行く気にならず、また今回のプレイ記録を書こうと思うもなかなか書く気が起きないまま2021年を迎えた。
そうしているうちにNianticの「新作ゲーム」として任天堂のピクミンシリーズのスピンオフアプリの発表があり、やはり昨年の静原行きのIngressPrimeプレイ記録を書いて何処かにUPしないといけないという気持ちに駆られるようになった。そして自分が存在を把握した建材業者敷地前の石灯籠の現物確認もすべきだろうと思い、今年の5月8日、再び京都・洛北に向かった。
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この日の洛北行きでは京都市街地からの路線バスは使わず、叡山電鉄市原駅で下車。但し自宅を出発したのが遅かったこともあり到着したのは17時過ぎ。石灯籠がある場所はここから徒歩で30分もかからない所であるので日没にさえ間に合えばよい。
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昨年の静原行きの際には気が付かなかった市原の鞍馬街道旧ルートは、叡電市原駅と市原バスターミナルを繋ぐ道でもある。
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市原バスターミナル東側の踏切から府道40号線を撮ったもの。ここも歩道の無い場所であり、踏切のすぐ北側にかかる橋を渡って住宅街横の川沿いの道を北進し再び橋を渡った方がより安全に目的地に到達出来たという事を帰路にて知ることとなった。
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そして今回の目的地に到着。気になっていたのはこの石灯籠である。場所としては上記画像の上から3枚目の地図上にある青い点が示すところになる。灯籠のタイプとしては日本庭園の装飾としても定番の春日灯籠と呼ばれるものであるが、そんなに古い時代のものではなく作られたのは前世紀後半以降ではなかろうか。
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だがこれが静原の金毘羅山への参詣ルートを示す金毘羅灯籠なのかどうかは現物をみた限りでは全く判らず、それ故ポータル申請もしなかった。この灯籠のある場所の横にある建材業者に関係者がいるのであれば訊いてみようかとも思ったが、結局訊かずにその場を後にした。
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徒歩で市原駅に戻る途中、今回の目的地に向かう際に見かけた愛宕灯籠がまだポータルになっていなかったこともあり、ポータルに相応しいかどうか見定める。この時は新しい灯籠のように見える石柱が実は愛宕神社の神札を納める祠(御札入れ)である事を知らなかった。祠の上部に枯れたシキミの束が3本括りつけられている三叉の棒があるのは、この灯籠にまつわる風習が健在である事を示唆するものだ。ちなみにこの三叉の棒は昨年静原を訪れた際に見かけた静原集落のバス停横の愛宕灯籠では見かけず、ネット検索するとどうやら京都・洛北の一部に見られる風習とのことで、「お飾りさん」と呼ばれていて洛北地域でも松明を使った愛宕信仰の祭礼「松上げ」が行われている地域の風習である由を書いたツイートがあった。


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御札入れは昭和55年(1980年)1月に建てられた由が記されているが、灯籠のほうは側面に建てられた年月が刻まれてはいるものの、この時の自分には20世紀前半の大正時代のものかもしれないという事以外は読み取れなかった。
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この愛宕灯籠については、ここから南の府道40号線鞍馬街道旧ルートの分岐点のところに存在する「常夜灯」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.089326,135.758118&z=17&pll=35.088461,135.762414として登録されている鞍馬街道の痕跡のひとつの愛宕灯籠と関連したものと判断し、Ingressにおけるポータル「愛宕灯籠(叡電市原駅前)」としてNianticへの位置情報申請を行った。なおこの件については後日ポータル申請通過のメールがNianticより届いた。
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折角なので「常夜灯」ポータルこと府道40号線沿いの愛宕灯籠にも行ってみた。こちらも灯籠横に建っている愛宕神の祠の上部に三叉の棒が設置されシキミの束が括りつけられていた。日本仏教の風習に欠かせない植物であるシキミだが愛宕信仰においても欠かせない植物だったりするところ、愛宕信仰が本来は神仏習合の信仰であったことの証とも言えるだろう。
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京都市街行きのバスを市原駅周辺で待っていても退屈なので徒歩で南下し、二軒茶屋駅前の金毘羅灯籠を再び尋ねた。ここの金毘羅灯籠に灯りが点された時代は遠くなり、灯が再び戻って来る事はもう無いのかもしれない。静原の金毘羅山の琴平新宮社は地域住民の信仰の場として残っても、江戸時代以降の京都で行われた洛中と金毘羅山を繋ぐ金毘羅信仰は時代の変遷で下火になり実質無くなってしまったか、まだ残っていたとしても参詣の為の移動手段として徒歩を必要としなくなったという事だろう。

そしてこの日も安井金比羅宮を訪れようと思うも、七条・正面通某所における『IngressPrime』プレイ画面上の情報と『ポケモンGO』及び『ハリー・ポッター魔法同盟』のプレイ画面上の情報との比較の為のスクリーンショットを撮りたいと思い、そちらを優先した結果行かずじまいになった。

あとがき

結局発端が「だいたいNIA以上に任天堂(というか『どうぶつの森』というコンテンツ)のせい」な三度に渡る京都・洛北での「調査」(という名のプレイ)だったが、「任天堂作品における静原神社一帯のポータルからのXMの影響を調査する」という本来の目的そっちのけで日本語圏のネット上で閲覧出来る情報も参考にしながら金毘羅信仰や愛宕信仰に纏わる洛北地域の事物の存在にほんのちょっと触れる興味深い機会となった。行けなかった安井金比羅宮と静原の琴平新宮社はそのうちいつか訪れたいが、その機会を自分が作る時が来るのと自分がCOVID-19への感染等で最悪この世との「縁が切れる」或いは「NIAがスキャナーの提供をやめてしまう」(IngressではIngressアプリは某国の諜報機関NIAが謎物資XMの調査・属性操作目的で某企業を介して提供しているシステムという設定なのでプレイ画面の事をスキャナーと呼ぶ)のと、果たしてどっちが先になるだろうか。昨年の初め以降、任天堂もPRに加担している2020東京オリンピック・パラリンピックの動向も含め(結局その後開催強行されてしまったが)、自分の気分は『太平記』の後半で描かれた愛宕山の異界に結集し形而上の世界から世を正す為の騒動が再び起きるよう仕向けなければと策を論ずる崇徳天皇はじめとした怨霊勢や天狗勢にちょっとだけ近かったりするのだが、残念ながら自分には不思議な力で世を正すスキルなど元からない。もし仮にそんなスキルを持っていた或いは手に入れたところで悉く面倒な事態を招くだけだろう。
ところで任天堂作品(特にどう森シリーズ)における静原神社一帯のXMの影響とやらは結局どういうものなのだろうか? 敢えて無理矢理にでも定義するならば、「水のようなもの」に他ならぬのではないのだろうか。娯楽に限らない人類の多種多様な文化という形で現れているXMの影響が枯渇したりその性質が変わるような事が起きれば、娯楽のひとつであるゲームもまたその影響を受けるのではなかろうか。
古代中国の思想家・韓非の著とされる『韓非子』に「盂方水方、盂圜水圜。」という「水は方円の器に随う」という諺の元となった世の中の道理を水とそれを入れる器(盂)に例えた孔子のものとされる言が載っているが、XMが与える影響がどのようなカタチで世に出るかは結局影響を受けた者の技量と感性を遺憾無く発揮出来る環境を生み出す諸条件の積み重なり次第なのである。XMの持つ力は『平家物語』の前半において白河法皇(白河天皇)のボヤキの中に登場する「賀茂川の水」のようなもので、事実昨年のCOVID-19パンデミックが確定した直後に世に出された『あつまれどうぶつの森』は世の多くの事象を巻き込む激流となって一世を風靡しているが、コンシューマーゲーム機の覇者の座を降りて久しい任天堂にまだまだそういう力が残っているのもこれまでの諸々の積み重ねの果てにXMの影響を受けたクリエイター達がその感性と技量を発揮出来る場所という「器」になっているからだと言えよう。しかしその「器」とやらも結局のところは日本社会における各種のヒエラルキー(特に産業界のそれ)ありきでしか成り立たない「砂上の楼閣」でしかなく、何も任天堂作品に限った話ではないが日本社会が抱えている歪みの影響も作品の中に現れているのでは? と思うのは自分だけだろうか。

以下はおまけ。今回の3度目の京都・洛北行きの帰りに立ち寄った時の、京都・七条は正面通某所における現実世界の状況と『IngressPrime』・『ポケモンGO』・『ハリー・ポッター魔法同盟』それぞれのプレイ画面上での状況である。
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この時訪れた任天堂創業の地こと山内任天堂旧本社ビルは仮囲いに覆われていた。そしてこの場所で『IngressPrime』を起動させた時の画像がこれ。
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続いて『ポケモンGO』を起動してみた時の画像がこちら。
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そしてNianticにとっては結局大コケ案件となってしまった『ハリー・ポッター魔法同盟』を起動してみた時の画像がこれら。
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ポケモンGOではポータル密集地域における全ポータルの情報がポケストップ及びジムとして反映されない場合が多い上に配信直後の狂乱ぶりが災いしてポケストップ及びジムが置かれた場所の管理者から情報の消去を求められたNianticがある程度それに応じた事もあり、山内任天堂旧本社ビルにある「任天堂発祥の地」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=34.991662,135.765239&z=19&pll=34.991642,135.766305の情報が反映されていないのも何ら不思議ではないのだが、魔法同盟の方ではどうなのだろうと思っていたらちゃっかり反映されていたようである。

因みに山内任天堂旧本社ビルであるが、現在それを管理しているのは任天堂の創業家である山内家であり、それ故か2010年代以降の本邦における主要産業であるインバウンド顧客向けの観光業の隆盛に便乗した宿泊施設への改装の件がCOVID-19パンデミック確定前に話題になり、その後施設運営元となる企業が出した公式ニュースリリース(PDFファイル)によると当初の計画を一部変更して飲食店も入る予定となったらしいが、天運とは必ずしも味方になるとは限らぬもので開業は今夏予定とあるが(なお2021年10月3日の時点でも開業のニュースはなく運営元になる株式会社Plan・Do・Seeの公式サイトをみても進展はない)果たして開業に漕ぎ着けたところでどうなることやら。とは言え開業したらそれはそれで話のネタとして改めて訪れてみたい場所ではある。
hotelbank.jp

それにしても「任天堂創業の地」ポータルのある山内任天堂旧本社ビルにポケGOのポケストップやジムはないのに魔法同盟の喫茶店があり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに登場したマリオの世界にピクミン達が違和感無く紛れ混んでいる造形の任天堂エリアがハリー・ポッターエリアの「黒い湖」の向こうに位置しているという偶然は、Nianticによるピクミンアプリの件も含めNIAとワーナーと任天堂の三者によるXMを巡っての陰謀と言うか水面下での駆け引きでも起きているのか? という、Ingresエージェント視点からの考察(という名の妄想)の題材には持ってこいなのかもしれない。

【2021.10.12追記】このエントリをUPした後、USJがポケモンとも組むという話が出てきて噴いたwまさかの「全ての元凶」が漸くUSJに来るとかIngressエージェントによる考察という名の妄想が更に捗って仕方がない(苦笑)
これで更に山内任天堂旧本社ビルがホテルとして開業した後にNianticが持っている「任天堂発祥の地」の位置情報データがポケGOに反映されようものならIngressエージェントとしては本当に「伊藤園のお茶を噴く」以外に無いが、Nianticへの位置情報申請は今やポケGOからも可能なのでかの場所が開業に漕ぎ着けた後に既存の位置情報データが反映されるのと気の早いポケGOトレーナーが申請するのと果たしてどっちが早い事になるだろうか? それどころか既存の位置情報データとポケGOトレーナーによる申請に基づく位置情報データの双方が存在する状況になるかもしれない。まあもし仮にそうなったとしても個人的には位置情報のタイトル名が異なるなら多少は許せるか。しかし「任天堂発祥の地」の位置情報データ、サービス開始待ちのピクミンアプリには果たして反映されるのであろうか、それとも……?
そういえば『ポケモンGO』が世に出た経緯に関して石原恒和氏と増田順一氏がIngressエージェントだったって話が電ファミニコゲーマーによる石原恒和氏・増田順一氏・Niantic川島優志氏の鼎談にあったな。
news.denfaminicogamer.jp
この鼎談だが、今改めて読んでも結構面白い。だがポケGOの大ヒットがNianticとポケモン双方に及ぼした影響を見ていると、ダメな意味でのXMの影響もとい人間の業も垣間見てしまうというか……

Ingress Sitrep:京都洛北静原行(だいたいナイアンと任天堂のせい)・前編

自分がゲームネタに興味を示すきっかけとなったNianticのコンテンツ『Ingress』であるが、運営と「エージェント」と呼ばれるそのユーザー(プレイヤー)をつなぐメインの場であったGoogle+がサービスを終了して後しばらく経ってから、Niantic自らが公式コミュニティサイトを用意した訳だが、『IngressPrime』へのアプリ一新が結果的に多くのユーザーの離脱を招いたこともあってそこに嘗てのGoogle+のIngressユーザー界隈のような勢いは無い。実際自分もGoogle+にIngress関連の投稿を色々書いていた頃に比べて進んで見に行くようなことはない。
だが自分のIngress案件の活動録ははてブロではなくそこに書いたほうがよいのかなと思って以下の記事をIngress公式コミュに投稿したのは今年の5月下旬のこと。それから4ヶ月程経ったが、やはりこちらにも転載しておくことにした。
community.ingress.com
以下、最近某フリーライターによるダメ過ぎな記事案件で改めて話題となっている所謂「おっさん構文」的な要素を兼ね備えてしまっている長文だが(まあこのブログの過去記事全部そうではあるのだがw)、タイトル変更と一部手直しをした上で前編・後編に分けてこちらに転載する事にした。このネタに付き合う気力のある方はどうぞご笑覧を。

京都洛北静原行・前編

昨年からのCOVID-19パンデミックの影響がまだまだ続く現在であるが、昨年とあるゲーム関連のネットメディア記事がきっかけで気になった件があってその確認に行く筈が、Nianticの位置情報ゲーム『Ingress』のユーザーによって作成されたゲーム内ミッションに京都洛北方面で過去に存在した金毘羅信仰に纏わるものが有ることを知り、それもクリアした件についてプレイ記録──Ingressユーザーの間ではアメリカ英語で状況報告を意味する「Sitrep」と呼ぶ──を書こうとするも正直面倒で放置していたのだが、今更ながらやはり書くことにした。
それに合わせて当時の移動中にその存在に気付いて疑問に思うも調べることが出来なかった構造物に関し、それが存在している地点に改めて「調査」の為に向かったので、その事についても書くことにする。

イントロダクション

きっかけはファミ通.comと4Gamerに掲載された、昨年行われたCEDEC2020における任天堂の『あつまれどうぶつの森』アート担当スタッフによるオンラインセッションの記事である。
s.famitsu.com
www.4gamer.net
ポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』の配信開始から間もない時期、自分が所属している非公式Ingressユーザーコミュニティの一部の者がそれをプレイし始めるもアプリの出来に対する不満を言っていたのを見た上にTwitter上の反応でも結構顰蹙を買っていたのを見て、「コンシューマーゲームで遊ぶ」という事から長らく離れていた自分はかの任天堂が作ったiOS/Android向けアプリゲームの出来がどれだけ酷いのか話のネタにしようと思いポケ森をプレイし始めた結果、自分がIngressをプレイする原動力のひとつとなっていた「世の中に対する自らの怨嗟」を一瞬ボロボロにしてくれた「とたけけ」──皮肉にもそれは自分が過去に唯一夢中になった任天堂の作品に関わったコンポーザー案件でもある──という存在に対する負の感情も含めた複雑な思いとNianticや日本のIngressユーザーコミュニティへの失望もあって今や現行アプリの『IngressPrime』そっちのけでプレイし続けているという有り様に陥り、それ故どうぶつの森シリーズに関するゲームメディアの記事に目を通す事も多くなった。そういうわけで前述の記事を見た自分は記事に掲載された講演スライドのスクリーンショット画像の1枚に写っていた神社がどこであるのが大変気になり、

該当の神社は、

・関西圏の人里近くの針葉樹メインの山林の周縁で京阪神圏及び京阪奈圏から日帰り可能な場所にある

・境内の建造物は数段の石垣の上に存在し山林と反対側(写真では手前側)は草地である

・神楽を奉納する為と思われる舞殿(およびそれを兼ねた拝殿)が存在する

・舞殿におそらく神社の名前が記されていると思われる古い扁額が掲げられている

・鳥居の位置と舞殿の扁額の位置関係からして本殿正面方向に鳥居が建っていない

・敷地内にかなりの樹齢であると思われる針葉樹が数本存在しそのうち一本には注連縄が巻かれている

・あくまで直観ではあるが構造物の様子から創建年代は19世紀の明治維新以前で現存する社殿も長らく新築及び改築した様子がない

と推測、日本語圏のネット上に複数存在している神社関連のデータベースで該当する神社が無いか検索した所、京都・洛北は静原にある静原神社の可能性があると判断、その地点のGoogleストリートビューを探したところ当該地点の境内の画像が例のスライドに使われていた神社の画像に写っていたものとほぼ一致していたのである。
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Ingressエージェント的な物事の見方をするならば、『ポケモンGO』の発表以後任天堂の製品及び作品群もXMの恒常的かつ尋常ではない影響を受けている(というか今までずっと尋常ではないXMの影響を受けてきた)のではという解釈が出来る訳で、任天堂経営陣と近い関係にある内部のクリエイターに「エージェント」ことIngressユーザーが複数名存在している可能性を強く疑うようになった自分は当時この事を興味深く思い──その疑いは今年3月のNianticと任天堂からのピクミンアプリ配信予定のアナウンスでほぼ確信へと変わったが──、該当の場所は既にゲーム内のプレイ拠点として登録されている(設定上では人類に影響を与えてきた謎物質XMの湧出地点とされる)「ポータル」が存在しているだろうと世界各地のポータルが確認できるIngressIntelMapで確認すると、やはり「静原大明神」
https://intel.ingress.com/intel?ll=35.111468,135.789831&z=18&pll=35.111168,135.789823
として登録済みであった。
そこで時節柄文句を言われるのは百も承知で、本邦政府や自治体がこの期に及んでもなお都道府県間の移動制限要請しか出来ないのを良い事に、ひとりで「現地調査」を実施しようと思い立った。

因みに目的地である静原神社についてネットで調べると葵祭で知られる上賀茂神社及び下鴨神社と縁深く、かつては葵祭に欠かせない葵(フタバアオイ)の葉を調達していた神社であったそうで、また京都・洛北のトレイルルート上にある神社としても知られている模様である。そうであるならば上賀茂神社及び下鴨神社周辺を起点とした静原神社に向かうルートを通るゲーム内ミッションが有るのでは……と探していたところ、「下鴨神社 鳥居」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.037667,135.772757&z=19&pll=35.037752,135.772762のある下鴨神社のニの鳥居を起点とし静原と大原の境に位置する金毘羅山にある琴平神社──山の中腹にある琴平新宮社と山上にある琴平神社奥宮の2ヶ所が存在するが、山上の琴平神社奥宮は「金毘羅権現神社」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.120021,135.807985&z=16&pll=35.118202,135.808898として登録されている──への参詣客の道中安全を祈願して19世紀前半の幕末期に建てられた石灯籠を巡るIngressユーザーによる作成のゲーム内ミッション「金毘羅大権現の灯篭めぐり」https://intel.ingress.com/mission/b50dd93f153648b2acdf917fc86adfb6.1cの経由地点が当該地点の近くであると知り、折角なのでそれもクリアすることにした。

時間ロスだらけの下鴨神社~深泥池貴舩神社来訪

昨年(2020年)の9月15日、家族に同行して奈良市内を訪れる用事が終わった後、自分は「金毘羅大権現の灯篭めぐり」ミッションを開始すべく下鴨神社へ向かった。
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下鴨神社に到着したのは15時過ぎ。正直この時点で開始しても公共交通機関を利用した場合は当日中のクリアは無理と思うべきであったが、何とかなるだろうと思いミッションを開始してしまう。
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このミッションが下鴨神社の二の鳥居をスタート地点としているのは、主題である金毘羅山の琴平神社への参詣ルート沿いに建てられた石灯籠のひとつが下鴨神社境内にあるという内容の「NPO法人京都観光文化を考える会・都草」のサイトにあった会員の研究報告会の記事に書かれた話を元にしているからだろう。
www.miyakogusa.com
因みにこの話によると現在下鴨神社境内にあるその石灯籠は元々は下鴨神社の南にある葵橋の東詰に建てられていたらしく、静原側からの金毘羅山の琴平神社への参詣ルートの起点は本邦の怨霊伝説の主人公として名高い崇徳天皇(崇徳上皇崇徳院)所縁の神社である安井金比羅宮若しくはその北側にある崇徳天皇廟だった可能性があるそうだ。金毘羅信仰自体は明治維新後の本邦政府の神仏分離令によって祭神を毀損された神仏習合に基づく水神(海神)・山岳神信仰だが、崇徳天皇の怨霊伝説が金毘羅信仰と結びついたのは神仏習合が当然だった時代に配流中の崇徳上皇が讃岐の金刀比羅宮に祈願の為に籠ったという伝説が創られた故である。なおアプリ内画面やIngressIntelMapに表示された説明文によると金毘羅山に纏わる話として崇徳天皇の側室で彼の讃岐配流に同行し後に帰京した兵衛祐局がこの地に彼を祀ったとの事だが、金毘羅山はかつて江文山と呼ばれ山中に江文寺という神仏習合の寺院が存在したことも背景にあると思われる。因みに江文寺自体は衰退の末に19世紀後半の明治時代の神仏分離令に伴い江文神社となって今に至っている。
江戸時代の日本は有名な寺社への参詣が身分の低い層にまで広まった時代でもあり、参詣の為の金策確保と地域民の結束の強化を目的とした講と呼ばれるコミュニティまで登場した。金毘羅信仰の総本山である讃岐の金刀比羅宮への参詣旅行も金毘羅講と呼ばれる請を中心に当時の日本国内の各地域で頻繁に行われ、京都の洛中と静原の金毘羅山を繋ぐ参詣ルートの成立もその影響を受けたものなのかもしれない。

しかし崇徳天皇というと、保元物語の「皇を取って民とし民を皇となさん」という配流先の讃岐国(現・香川県)での怨嗟エピソードを含め死後に体制側主導による「祟り神」認定をもって名誉回復が行われたが故に創作物の格好のネタにされてきた君主であるが、前近代の歴代中国王朝の歴史書であればどんなに同情気味に評されても「暗愚の君」扱いされて終わりなのではと思うのは自分だけだろうか。
なお史実における崇徳天皇はその治世においては当初は3代前の天皇だった白河法皇が実権を握り、白河法皇亡き後は父にして先代天皇である鳥羽上皇が実権を握り、最終的には鳥羽上皇の意向によって退位に追いやられて上皇となるもその後の後継者問題も絡み院政期の上皇としては珍しく権力の座から遠ざけられた状況下に追いやられていた。それ故に彼は怨霊伝説の由来でもある保元の乱の当事者となり自滅に至るが、中華圏の影響で詩歌の創作スキルを重視した前近代の日本の支配者層において天皇・上皇という立場である上に和歌の創作に熱心だった事もあり、当時の支配者層内部における歌壇の中心人物の座を必然的に担ってもいた。彼が創ったとされる和歌のひとつ、

瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

は後世にカルタのかたちで日本社会に広く流布した13世紀の鎌倉時代以降に編纂された和歌集・小倉百人一首に収録されており、落語の『崇徳院』はこの和歌に肖った者を巡るドタバタ劇を描く。彼の存在とその和歌を任天堂などが製造販売している百人一首カルタで知ったという方もいるのではなかろうか。なおこの和歌は、彼が退位後上皇に就いた後に彼の命令で編纂された『久安百首』に収録の、

ゆきなやみ 岩にせかるる 谷川の われても末に あはむとぞ思ふ

という彼の和歌を改作したものである。
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下鴨神社二の鳥居の傍に、神社参道の石灯籠とは外観の異なる常夜灯の文字が彫られた石灯籠が1基存在する。かつて葵橋東詰に建っていたという金毘羅灯籠のひとつがこれなのだろうか? 参拝がてら境内の立ち入り可能な場所も一応回ってみたが、今回のミッションで巡る他の金毘羅灯籠と外観を同じとする灯籠の存在がこれ以外にあるのかどうかまでは判らなかった。
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下鴨神社境内の拝殿前にある舞殿。自分がネット上の情報を頼りに静原神社を特定する手がかりのひとつとなったのが、この舞殿のような大規模な神社はおろか小規模かつ観光資源化していない神社でもあまり見られないであろう建造物の存在である。とは言うものの実は自分は日本仏教と神道の寺社建築にとりわけ詳しいと言う訳ではなく、今まで興味を示して来た物事に関する記憶がたまたま功を奏したまである。

自分が下鴨神社に来たのは実はこれが始めてなのだが、季節柄流れ出る汗と寄ってくる蚊が鬱陶しい状態での「調査」とミッションプレイスタートとなった。重度の花粉症でも無い故にCOVID-19パンデミック以前は風邪でもひくか埃まみれになるような事をやらない限りサージカルマスクをつける事などまず無く、パンデミック確定後もワクチンや治療薬が開発されて普及しない間は体調に関係無くてもマスク着用が対策のひとつとして効果があるという事が専門家の見識として固まるまでマスクを着けなかった程の自分なので、マスクの内側で止まらない汗も鬱陶しかったのだがパンデミックが続く間は仕方ない。そんな気分的に煩わしい状況であるにも関わらず参拝がてら境内のポータルキャプチャを始めてしまいミッション開始早々時間ロスをやらかしてしまう。

そして次の通過ポイントである深泥池貴舩神社https://intel.ingress.com/intel?ll=35.059351,135.766253&z=19&pll=35.059396,135.766227を目指すのだが、バスでの移動を目論んで北大路バスターミナルに向かうも乗るべきバスに間に合わず結局徒歩で移動する事にしたが、今来たこの道を戻るのも面倒と思い賀茂川西岸を北上した結果更なる時間ロスを招いてしまった。
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深泥池貴舩神社に到着したのは17時頃。この時点でミッションの一時中断の判断をし、この日はここで引き返す事に。
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深泥池貴舩神社の金毘羅灯籠。境内に入って直ぐ右側に建っている。横に同じタイプの石灯籠が建っているが、関連したものなのかどうかは判らなかった。
因みにこの深泥池貴舩神社だが、洛北・貴船にある貴船神社がやはり洛中から遠いという理由で当時の洛北方面への主要道路だった鞍馬街道が通る深泥池西側のこの地に創建された神社であるとの事。境内には京都名物のひとつのすぐき漬け発祥伝説のある摂社・秋葉神社があり、最近では節分の豆撒き発祥伝説を主張したりと小さいながらも中々ユニークな神道の信仰の地である。因みに貴船神社は江戸時代まで上賀茂神社の管理下に置かれ、それが元での両神社間の係争も起きていた。節分の豆撒き発祥伝説の「鬼が貴船神社と深泥池の畔を繋ぐ洞穴を通ってやって来た」という内容も両神社間の係争を背景とした上賀茂神社側の視点からの創作としか思えず、またすぐき漬け発祥伝説も「賀茂社の関係者が明治維新に伴う政府の神仏分離令により境内の仏教由来の事物を壊しに来た」というこの神社もかつては上賀茂神社の管理下に置かれていた事を示唆するような内容から始まっている。なお神社の前には鞍馬街道が通っているが住宅街を通る狭い道ということもあって自動車の通行があるので来訪の際は要注意である。

二軒茶屋バス停近くの石灯籠から静原神社へ

3日後の9月19日、中断した金毘羅灯籠ミッションの再開そしてクリアと静原神社での調査実施を果たすべく再び洛北へ向かった。
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この日のスタート地点は叡山電鉄二軒茶屋駅最寄りの京都バス二軒茶屋バス停南側にある金毘羅灯籠──現在「安全の灯籠(金毘羅灯籠)」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.078029,135.764896&z=18&pll=35.077703,135.76432として登録済み──にした。ミッション自体の通過ポイントはこの先にある静市市原町の厳島神社の「市原 厳島神社」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.08802,135.762201&z=19&pll=35.087993,135.761961なのだが、それはミッション説明文にもある通り、ミッション作成当時はまだこの石灯籠を含めた二軒茶屋駅前一帯におけるポータルの情報がNiantic側に登録されていなかったからという事情がある。従って金毘羅灯籠巡りとしてミッションプレイを再開するのであればこの灯籠のある場所が妥当であると考えたからだ。ここに到着したのは14時半前。本当はもう少し早く来るべきだったと思うが生活リズムが完全に夜型な今の自分の状況では中々難しい。
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灯籠の柱部分側面に建てられた年月が記されているが、自分には「文政二」と思われる3文字までしか判らなかった。文政という年号が使われたのは1818年から1831年までの13年間なので、文政2年(1819年)に建てられたという事なのだろうか。
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この金毘羅灯籠であるが、この辺りの区間ではかつての鞍馬街道を通る京都府道40号線との交差点に面した駐車場の片隅に存在し、府道40号線は乗用車やバスのみならず大型ダンプカーも頻繁に走る交通量が少ないとは言い難い道路で、また府道の向かい側には住宅兼商店があるので写真撮影の際は注意を要する。
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ここから第3の通過ポイントである静市市原の厳島神社には徒歩で向かう事にした。しかし府道40号線を北進する気が起きず近くに裏道がないか探すと、府道と叡山電鉄本線の間を流れる川沿いに遊歩道があるのを見つけてそれを通り、住宅街を抜けて小野小町終焉伝説所縁の小町寺こと如意山補陀落寺の南側で再び府道40号線に戻り、アプリ画面上にポータルとして示された補陀落寺をはじめとした府道沿いに残っている鞍馬街道の痕跡を経由するかのように通過ポイントに向かって北進した。
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市原の厳島神社に到着したのは15時を過ぎてからで、ここにはあまり用はないので手短に参拝して次の通過ポイントと今回の調査の目的地である静原神社に向かう為に近くのバス停で待とうとしたが、時間潰し目的で京都バスの市原バスターミナルまで歩くことに。実はここで叡山電鉄市原駅に向かう道でもある本来の鞍馬街道ルートの細い旧道に気付いていれば遠回りしなくても済んだのだが、静原・城山行きのバスにはなんとか間に合い乗車することが出来た。
市原から先は大原方面に向かう府道40号線に沿って静原まで移動する事になるのだが、Googleマップの空撮写真を見た限りでも道幅が狭い割に歩道が見当たらない場所があり、またこの区間も時間帯によっては大原方面との交通量が結構あり(ミッションクリア後の江文峠からの帰路でそれを思い知らされる事となった)、自動車・バイクを運転しての移動が可能な者あるいは自転車でもロードバイクを趣味にしている者以外は運行本数に限りのある路線バスでの移動が望ましい。かなり遠回りになるが鞍馬方面から往時の古道である薬王坂を通る京都洛北のトレイルルートを経由するか、市原から一旦京都市街に引き返した後バスで大原方面へ移動し往時の峠越えの古道である江文峠のトレイルルートを経由する(但し「金毘羅大権現の灯篭めぐり」ミッションは静原方面からのアクセスでなければクリア出来ない為このルートを使うと二度手間になる)という手段もあるが、トレッキングの知識と経験と体力が無ければリスクが大きい移動手段と思ったほうが良いだろう。

路線バスに乗って静原に到着したのは15時半過ぎだが、金毘羅灯籠巡りミッションの第4の通過ポイントはミッション作成時期の都合なのか「静原神社」ポータルhttps://intel.ingress.com/intel?ll=35.11014,135.781725&z=17&pll=35.108084,135.783724として登録されている静原神社摂社の天皇社である。その為天皇社の最寄りである京都バス静原御旅町バス停にて下車。この時の静原神社ポータルこと天皇社のポータルは自分が例のスライドの場所は静原神社なのではというツイートをした(そしてはてブのブコメに書いた)後にエンライテンド側のエージェントによってポータルキャプチャーされていた事をIngressIntelMapで確認済だったのだが、実際の静原神社の場所にある静原大明神ポータルとその周辺は誰もポータルキャプチャーしていない状況だったので、参拝とポータルハック及び強化とポータルスキャンをして天皇社を後にした。因みにこの天皇社については、静原神社の方も含めて現地に祭神について記してある看板等はこの時は見当たらなかったのであるが、静原神社の境内にある由来の看板に書かれた天武天皇の避難伝説と関係しているのか、京都市公式サイトの静原の里マップ(PDFファイル)には仲哀天皇天武天皇を祭神とするとの記載がある。
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静原神社に向かう途中、もうひとつの摂社である若宮神社へ。祭神が何か判らない上にまだNiantic側に位置情報が登録されていないので、祭神の手掛かりを見つけて位置情報申請を試みようとしたが、神社に向かう道が私道だからか道の入口に自動車が停められており近付けず断念した。

そして本調査の目的地、静原大明神ポータルこと静原神社に到着したのは16時頃。
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早速境内南側の道路上から例のスライド画像の「答え合わせ」目的の写真を撮る。そして調査の為に参拝。
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神社の由来を記す看板。この地での祭祀開始が和銅4年(711年)とする話が事実であれば8世紀前半から存在している事になる。
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舞殿か拝殿と思われた建造物はやはり舞殿であった。下鴨神社の境内にあるそれと比べればこじんまりとしたものではあるが、他にも舞殿と他の社殿との間に玉垣と門を設けて仕切っていたりと全体的に下鴨神社の社殿の造りと似ているところがある。但し主祭神イザナギ(伊弉諾)とニニギ(瓊瓊杵)であり、元々この神社が下鴨神社主祭神タマヨリヒメ(玉依姫)・カモタケツヌミ(賀茂建角身)や上賀茂神社主祭神カモワケイカヅチ(賀茂別雷)のような賀茂神信仰とは異なる信仰の神の祭祀の場であった事が伺える。
それもそうで境内の由来の看板の内容が事実であれば静原の地が下鴨神社の社領に置かれたのは16世紀の安土桃山時代以降ということになり、葵祭に使われる葵の葉の調達もおそらくそれ以降の話だったのではなかろうか。
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神社境内に隣接している公園から境内を撮ってみた。境内側の公園入口すぐのところに植えてある背の高いモミジの樹は紅葉の季節になるとさぞや美しいだろうが、緑の葉の時期のモミジも美しい。自宅から気軽に行けるモミジの名所は奈良公園なのだが、このモミジの樹もなかなかのものだ。
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モミジの樹の下から一の鳥居方向を撮る。一の鳥居は道路に面する形で立っており、例のスライドに写っていた鳥居はニの鳥居だったのである。そしてここの鳥居は一の鳥居・二の鳥居共に柱の前後に小さな柱がつく両部鳥居と呼ばれるタイプのものだ。
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もちろんポータルキャプチャーとポータルハックも行った。というかここでこれをやらなければ「調査」に来た意味が無い。ついでに小さいコントロールフィールドも作成した。そして今回の最大の目的である静原神社での調査を終えた自分は日没差し迫る中、同時進行の金毘羅灯籠巡りミッションの終点である江文峠へと向かった。

後編に続く。
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