ヘボゲーマーかくれねこの活動メモ

だいだいXM(エチゾチック・マター)もとい某位置ゲーのせいで興味無かった筈のスマホ・タブレット向けゲームアプリのほんの一部に心を囚われてしまった毒吐き閑人。更新は不定期且つ気力の有るときのみなので悪しからず。

ARに賭けたスマホのピクミンは『Miitomo』の屍を越えていけるのか?

当記事はピクミンブルームAdventCalendar2021の12月24日分の記事です。

正直なところ、これまで仮想空間とかVRとかそこにARも加えたMRとかXRとかいう言葉で説明されているコンピューター技術の産物である人為的な幻の世界が急に「メタバース」なる言葉で説明されるようになってから、IT音痴から脱出出来ない層決定な自分としてはその手の話は正直はワクワクするというよりは興ざめ気味にニヤニヤするものでしかなくなった感がある。挙げ句の果てには『あつまれどうぶつの森』をメタバースの一例として明する日本語圏のメディア記事まで出てきた有り様で、そういう見方もあるのかと思いつつもあつ森をメタバース扱いするのは違和感しかない。
で、そのメタバースをdisりつつ「リアルワールド・メタバース」なるパワーワードを言い出したのが我らがナイアンことNianticなのだが、Google時代からやきもきさせられてきたIngressエージェント(ユーザー)末席としてはちょっと呆れてしまった。まあ大口叩いてなけりゃ正直ナイアンらしくないとはいえ何かと不具合が多い各アプリはもうちょっとどうにかならんのかという感がある。が、やはりどうにも出来ないのだろうなあとも思ってみたりもする。まあ自分から言わせりゃMetaこと旧FacebookもNianticもメタバースとやらを巡っては五十歩百歩感しかしてこないし、どっちも考えていることは面白そうなのだが

そしてNianticから『ピクミンブルーム』がローンチされて2ヶ月が経とうとするが、個人的にはピクミンブルームは所詮ナイアンのアプリだしなあというこれまでの見解を変えるには到っていない。ただし今のところ『ポケモンGO』やサービス終了が決定した魔法同盟こと『ハリー・ポッター:魔法同盟』はおろか『IngressPrime』よりも面白く思っていて、ナイアンの各アプリより長時間起動しているポケ森こと『どうぶつの森ポケットキャンプ』の起動時間の多くを『ピクミンブルーム』が完全に奪っていった状況である。
だがナイアンであれば魔法同盟や任天堂であれば『Miitomo』『ドクターマリオワールド』みたく3年経たぬうちにサービス終了、下手したら2年も持たないのではという感がしなくもない。まあナイアンにピクミンというIPを貸した任天堂曰くピクミンブルームはゲームじゃないとの事だが、これ本当に長続きするんかという疑問はどうしても出てくる。まあピクミン自体が今の任天堂における自社制作コンテンツ四天王のうち最も最弱でスプラトゥーンシリーズの今後次第ではそれにその座を奪われる可能性がある、いや既に奪われている可能性があるだけに(但し個人的には世代交代という意味でもそのほうが良さげな気もするのだが……)もし仮にMiitomoより短い寿命を迎えても多分納得しかしないかもしれない。
ところでピクミンブルームの原作であるピクミンシリーズとほぼ同時期に世に出た任天堂のコンテンツで、最新作で「既にオワコンな日本」発であるにも関わらず辛うじて今をときめくゲームとなった存在がどうぶつの森シリーズである。そのときめきぶりたるや今年のヒューゴー賞における年変わりネタ枠として設けられたビデオゲーム部門に何故かノミネートされて案の定受賞を逃す結果に終わったという珍事まで起きた程である。
www.thehugoawards.org
まああつ森のヒューゴー賞ノミネートについてはアイコンキャラが全員イヌ科系の種族という設定だけに要は『Hades』受賞に対する「噛ませ犬」だったという事でよいのかもしれない(苦笑)
そしてあつ森のときめきぶりはローンチ直後にどう森シリーズファンや任天堂に大してあまり悪い印象を抱いていなかった勢まで落胆させるも度重なるアップデートで評価をある程度取り戻し延命してきたポケ森に更なる延命の機会を与える事となった。そしてあつ森が辛うじて今をときめく外的な要因となったCOVID-19パンデミックの最中の2020年11月の3周年を期にポケ森に実装された新要素がある。それが「ポケ森AR」だ。


※なおポケ森3周年に合わせてポケ森ARの紹介動画もあったのだが、現在はYouTubeのNintendoMobile公式チャンネルから削除済みの模様。
なおポケ森AR実装については当時の自分はポケ森公式に対してアリだけど他に追加される要素と合わせてなんだかなという由のリプライを送っている。が、オチとしてはギフトでガチャであるフォーチュンクッキーを無料で入手出来るチャンスが増えたりと得になった事も多い。

このポケ森ARであるが、要はとび森こと『とびだせどうぶつの森』が2016年に『とびだせどうぶつの森amiibo+』にアップデートされた際に実装されたamiiboカメラのコンセプトを引き継ぐものと言って良い「ARカメラ」がメインである。amiiboカメラと異なるのはそもそもamiiboを使わないのは大前提として画面上に呼び出せるキャラはアンロック済みのキャラクター1体まで、キャラクターと一緒に家具アイテム1個が設置出来ること、そしてそれとは別に魔法同盟のポートキーと良く似た「ARコテージ」機能がある事だ。そもそもポケ森はARゲームではないのでポケモンGOや魔法同盟の様にプレイ画面をARモードにしてさもキャラクターが現実世界の風景に溶け込んでいるという感じでプレイすることは出来ず、『ポケットモンスターX』『ポケットモンスターY』の「ポケパルレ」や『ポケットモンスターサン』『ポケットモンスタームーン』の「ポケリフレ」的な方向性も有するポケモンGOのARと違い、ポケ森でのARモードでキャラとふれ合える機能は今のところ精々ARコテージでキャラクターをタップしたらセリフが見れるぐらいである。
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つまり、ポケ森ARはポケモンGOや魔法同盟のそれとは異なり「キャンプ場管理人」という設定のプレイヤー(ユーザー)が「客であるキャンパー」という設定のキャラと会話によって互いの意志疎通が取れていて、それ故に軽々しく触れるのは現実世界同様余程の信頼関係を持っていない限り失礼に当たるどころかその尊厳を棄損するものでしかない、どう森の世界観における「どうぶつ」はポケモンと異なり愛玩・使役の為のものではない、という世界観が前提のARだと言ってよい。そして魔法同盟のAR機能においてキャラクターやアイテムに触れる事が出来無いのは、対象が「ファウンダブル」という「大災厄」と呼ばれるイギリス魔法省絡みの事件によってマグルの世界に現れた魔法界に関する事物の幻影という設定だからであろう。
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ポケ森のARカメラはポケモンGOや魔法同盟のAR撮影機能と比べて自由度が高い。被写体として呼び出したキャンパー──どう森シリーズの他の作品では住民と呼ばれる事も多い「どうぶつ」と呼ばれるキャラクター──の撮影位置決めをポケモンGOに比べてもっと楽に行えるのだ。被写体の大きさを変えられるのも本来は撮影位置決めを楽に行う為のものである。ここまでは魔法同盟における「登録簿」(回収したファウンダブルの記録簿)から一部のファウンダブルを呼び出してのAR写真撮影と大差なく、撮影位置決めについては寧ろ魔法同盟のAR撮影機能のほうがスマート且つ楽だったりする。ただしポケ森のAR撮影機能はキャラクターのポーズも変えられ、更には画面切替でキャラクターと一緒に自撮りも出来るというユーザーの欲望をなるべく叶える方向の撮影機能まである。Nianticのアプリのうち一番自由度の高い魔法同盟のAR撮影機能に被写体にしたいキャラクターのポーズ変更や自撮りといったものがないのは、前述したとおりそれが「幻影」だからだという事で納得が行くであろう。
しかし現行のAR画像表示で良くある話なのかどうかは知らないが撮影中に被写体として呼び出したキャラクターが画面内で「どこかへ行ってしまう」事も多い。しかもGoogleのARCoreへの対応が必須になるため未対応の機種では無用の長物でしかない。その為ARCore未対応端末でポケ森をプレイしているユーザー救済の意味も兼ねて後に「かんたん撮影モード」というAR撮影画像風レイヤーが実装されている。

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個人的にはAR写真を撮るとしても画面上に呼び出したキャラクターを小さな妖精や手のり文鳥みたいな扱いにするのは自宅内での撮影などそうした方が無難な場合を除きどうにも違和感がある。ただそういうのはどう森シリーズ現プロデューサーである野上恒氏がパニエルに扮し怪演ぶりを見せた色々悪ノリ感満載のいつぞやのとび森ダイレクトの頃から公式がやっている事なので仕方ないw
youtu.beこれの7分26秒辺り。頭部以外はほぼ全身タイツな着ぐるみのとたけけがamiiboで呼び出したジュンを掌に乗せている様にして撮ったamiiboカメラの画像がある。下の画像がそれ。
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因みにこの後に続くシーンはあつ森の最終大型アップデートにおけるカットリーヌ実装の伏線だったりする。

ではピクミンブルームのARはどうかというと、当然の事ながらAR写真撮影においてはポケモンGOのそれと似たようなものなのでポケ森AR程の自由度はない。ピクミンブルームのARモードはピクミンを触ると鳴き声を出すところはポケモンGOと同じでそこから更に摘まんで持ち上げる事や少し離れたところに投げると言ったことが出来るのであるが、ユーザーが思うようなAR写真を撮るにはポケモンGOのそれ同様に、いやそれ以上に相当のコツと慣れが必要なのである。何せポケモンGOでは野生のポケモンは捕獲者に過ぎないプレイヤーの様相をじっと伺い、プレイヤーの手持ちのポケモンは現在の飼い主であるプレイヤーを何とか信頼している模様であるというシチュエーション故に常にプレイヤー側を気にして対峙しているのだが、ピクミンブルームのピクミンはそうではなくリーダーと見なしついて行っている存在である筈のユーザーの前ですら各個体がこちらを気にしつつも思い思いに動き回り、時には「画面の外」にすら行く個体までいるのである。ホイッスルの音である程度統率出来るとは言え、なんと言うか飼い猫と一緒にいるような感じだ。
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そういう意味では、ピクミンブルームについては蓋を開けたらピクミンが死なない世界とは言え肩透かしを喰らったピクミンシリーズファンも多いのでは無かろうか。何しろピクミンシリーズはピクミンが棲む惑星に不時着した平均身長3cmな宇宙間航行技術を持つ他惑星の人類がピクミンの習性を良いことにそれを使役しながら幾多の危険を乗り越えていく冒険譚にして異郷訪問譚である。原典であるピクミンシリーズ各作品におけるピクミン達は、そこそこの知能を有するが故に一時的とは言え群れのリーダーと見なした者に対してまるで飼い主には絶対服従する調教済みの犬のように振る舞っているどころかもはや軍隊そのものだ。シリーズ初代作『ピクミン』のCMソングだったストロベリー・フラワー『愛のうた』が悲壮感漂う曲なのはそんな世界観設定であるが故である。
youtu.be
その初代ピクミン制作・開発時に、宮本茂以下制作スタッフがゲームプレイをしていない時にもピクミンが目の前にいるような感覚になるような作品にしないといけないという認識でいた事は前のネタ記事の中で触れたが、再度引用しておく。
www.1101.com

宮本 ぼく、このゲームをどんなふうに遊んで欲しいですかと言われたときに、よく言っていたのが、花札を一生懸命やってると、お風呂に入っていても、短冊が湯船に浮かんでるような気になりますよね、っていうこと(笑)。熱中したりすると、ね
糸井 (笑)
宮本 そういうふうにして、ピクミンが見えなあかん、と思ったんですよ。お風呂に入ったらピクミンが浮かんでるし、庭歩いてたら足下にピクミンがいる。    わかりやすく言えば「このゲームをやったあと、歩いていたら足下にピクミンがいて、踏みそうになる」ふうになるものをつくろう、と。    ……スタッフには、そういう精神論が多かったかな(笑)
宮本茂と糸井重里「ピクミンをめぐる対談」その6 足元にピクミンがいる。

ただこれはあくまでAR云々以前の、作品世界への没入感を如何にしてプレイヤーに与えるかという話に過ぎなかったであろうが、このほぼ日刊イトイ新聞による宮本茂と糸井重里の対談から20年近い時が経ち、今をときめく存在となったどう森シリーズと異なり自社制作フラッグシップコンテンツのうち最も最弱な状態が今なお続くピクミンシリーズの可能性と未来を任天堂はNianticのAR技術に賭けたと言っていいだろう。勿論、現時点でNianticが試みようとしているARの有り方にスーパーマリオシリーズ以下ピクミン以外の任天堂の自社制作コンテンツが合わなかったという事情もある。それについては英語圏のゲームメディアEurogamerの記事において触れられている。
www.eurogamer.net
だからこそピクミンブルームの発表アナウンス動画における宮本茂のメッセージは「ピクミンの原作者でスーパーマリオの父でもある宮本茂です。」という自己紹介から始まるのだ。
f:id:nekotetumamori:20211224161600j:plain※画像は英語版のピクミンブルーム発表アナウンス動画より
そしてその発表動画の中で公表されCMに使われているピクミンブルームのトレーラーのBGMが歴代ピクミンシリーズ本編に関わってきたピクミンのCVの人である若井淑氏か『ピクミン2』でサウンドディレクターを務めオリマーのCVの人でもある「とたけけ」こと戸高一生氏が作りそうな明るい雰囲気の曲なのは、ピクミンが死ぬ必要のない世界に悲壮感は不要だし、ARにピクミンというコンテンツの未来を賭ける事に不安を与えても仕方がないからであろう。だいたいナイアンが開発したという事以上の不安ははっきり言って要らぬ。なおピクミンブルームのサウンドを担当したのはカプコンのモンスターハンターシリーズのサウンドで有名になり『Hey!ピクミン』でサウンドを担当した甲田雅人氏であるが、トレーラーのBGMの作曲を誰が担当したかについてはまだ明かされていない。
youtu.be
いずれにせよ、宮本茂以下任天堂のピクミンシリーズスタッフ陣はこのトレーラーで表現された「足元にピクミンがいる」という世界観をいずれ何らかの形で世に出したかったのだろう。Nianticという「黒船」がARという概念を引っ提げてポケモンに絡んで来た事は彼らにとっての幸運だったのだ。
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そしてピクミンブルームにはもうひとつ、任天堂独自のアバター「Mii」を使った今は亡き『Miitomo』の次に出たMiiにも焦点が置かれたiOS・Android端末向けアプリという面がある。穿った見方をするならピクミンというコンテンツを利用した歩行に特化した目標設定のない『Wii Fit』とも言える。そんなピクミンブルームだが、任天堂からの配信ではないとは言え任天堂の自社制作コンテンツのアプリとして果たしてMiitomoの配信期間を越えることが出来るであろうか。せめて短命に終わるとしても『ドクターマリオワールド』のそれは越えていって貰いたい感は無いわけではない。
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……とまあ、またとりとめもなくだらだら書いてみたのだが、Ingressエージェント末席にしてポケ森世界のとあるキャンプ場管理人の些細な祈りを込めた駄文はこのぐらいにしておこう。